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文系でもエンジニアになれる?現実と可能性

「エンジニアは理系じゃないと無理でしょ?」

これは多くの文系出身者が抱く不安ですが、実はこれは大きな誤解です。私自身、多くの文系出身エンジニアと働いてきましたが、優秀な文系エンジニアは数え切れないほどいます。

文系エンジニアの現実的な数字

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発刊した「IT人材白書2020」では、IT従事者のうち最終学歴における専攻分野が文系である人の割合は、先端IT従事者が30.2%、先端IT非従事者が34.6%という結果が出ています。

つまり、現在活躍しているエンジニアの約3割が文系出身なのです。これは決して少ない数字ではありません。

「文系・理系」という概念の歴史的背景

「理系」と「文系」の定義は、明治時代に旧制高校が作ったもので、「お金のかかる学部を理系」「お金のかからない学部を文系」と分類し、お金のかかる学部の生徒数は絞らざるをえなかった。そこで数学の試験をして、「理系」と「文系」を振り分けたということです。

つまり、文系・理系の区分は単に「教育コスト」による便宜的な分類に過ぎず、エンジニアとしての適性とは本質的に関係がないのです。

文系エンジニアが理系に負けない5つの強み

1. コミュニケーション能力

システムエンジニアというと、1人で黙々と作業する姿を想像しがちですが、人と接する機会も多い職種です。プロジェクトをチームで協力しながら進めていくための進捗状況の共有、クライアントとの交渉など、さまざまな場面でコミュニケーション能力が試されます。

実際の現場では、プログラミング能力よりもコミュニケーション能力の方が重要な場面が多数あります。

文系エンジニアが活躍する具体的な場面:

  • 要件定義:クライアントの要望を正確に理解し、技術的に実現可能な形に落とし込む
  • プロジェクト管理:チームメンバーとの調整、進捗管理、問題解決
  • プレゼンテーション:開発したシステムの価値を分かりやすく伝える
  • ドキュメント作成:仕様書、設計書、マニュアルなど読みやすい文書の作成

2. 論理的思考力

文系だから論理的思考力がないというのは完全な偏見です。一般的に「理系=論理的」と思われがちですが、文系であっても論理的に話すことが好きだったり、ロジカルシンキングができる人はITエンジニアに向いています。

**実際、法学部出身者の論理的思考力は理系に引けを取りません。**哲学、文学、語学などの分野でも、高度な論理的思考が求められます。

3. 読解力・文章力

文系出身者は、読解力、文章作成能力、語学力に長けている方が多く、これらはシステムエンジニアとして働く上で強みになります。長文や複雑な資料から本質を読み取る力に長けていることが多いため、クライアントのニーズを的確に把握できます。

文系の読解力・文章力が活かされる場面:

  • 仕様書理解:複雑な業務要件を正確に理解
  • 技術文書作成:分かりやすいドキュメント、コメントの記述
  • エラー解析:ログやエラーメッセージから問題を特定
  • 英語ドキュメント:海外の技術情報を正確に理解

4. 学習能力の高さ

学習意欲や知的好奇心の高さも、ITエンジニアに欠かせない要素の1つです。常に情報がアップデートされるIT業界では、最新の技術や情報を取り入れておく必要があります。

文系出身者は大学で「学び方を学ぶ」訓練を積んでおり、新しい分野への適応力に優れています。

5. 多角的な視点

文系出身者は様々な学問分野に触れているため、技術的な解決策だけでなく、ビジネス的、社会的な観点からも問題を捉えることができます。これは上流工程や企画・提案フェーズで非常に重要です。

文系出身者が直面する3つの壁と対策

壁1: 基礎的なIT知識の不足

問題:

大学でプログラミングやプログラミングに必要な知識を4年間かけて学んだ人達と比べると、圧倒的に知識やスキルに差が生じてしまいます。IT関連の用語はとても多く、その数は1000個近くあるとも言われています。

対策:

段階的な学習プランで着実にスキルアップ

フェーズ1(1-2ヶ月):基礎固め

  • パソコンの基本操作(ショートカット、ファイル操作など)
  • IT用語の学習(100個程度の基本用語)
  • プログラミングとは何かの理解

フェーズ2(2-3ヶ月):実践基礎

  • HTMLやCSSでWebページ作成
  • プログラミングの基本概念理解
  • 簡単なツール制作

フェーズ3(3-6ヶ月):応用スキル

  • 本格的なプログラミング言語習得
  • フレームワークの学習
  • ポートフォリオ作成

壁2: 数学への苦手意識

問題:

「プログラミングには数学が必要」という思い込みで学習をためらう。

実際の現場:

フロント系の言語ではほとんど数学は使う事がありません。どちらかと言うと英語の様な「言語学習」に近い感覚です。

数学が必要な分野

  • AI・機械学習
  • データサイエンス
  • 画像処理・ゲーム開発

数学がほとんど不要な分野

  • Webアプリ開発
  • 業務システム開発
  • フロントエンド開発
  • インフラ構築・運用

対策:

まず数学を使わない分野から始める。実際、TwitterやInstagramのようなSNSアプリには高度な数学はほとんど使われていません。

壁3: 面接での不安

問題:

文系出身者がエンジニアを目指す際、採用面接時には「他の仕事の方が適しているのでは?」「これまでの職種と異なるけどなぜ?」という質問をされると想定されます。

対策:

説得力のある転職理由を準備

NGな回答例

  • 「なんとなく将来性がありそうで」
  • 「手に職をつけたくて」
  • 「年収を上げたくて」

OKな回答例

  • 「前職の〇〇業務でExcelの限界を感じ、プログラミングで業務改善したい」
  • 「〇〇のようなサービスを作りたいという明確な目標がある」
  • 「文系の強みを活かして技術と人をつなぐエンジニアになりたい」

文系におすすめのプログラミング言語ランキング

1位:JavaScript(学習難易度:★★☆☆☆)

おすすめ理由

  • 数式を全く使わない言語で、どちらかと言うと英語の様な「言語学習」に近い感覚
  • 即座に結果が見える(ブラウザで動作確認)
  • 需要が非常に高い(求人数が多い)

できること

  • Webサイトの動的な機能
  • Webアプリケーション
  • モバイルアプリ(React Native)
  • サーバーサイド開発(Node.js)

2位:Python(学習難易度:★★☆☆☆)

おすすめ理由

  • 初心者でも比較的わかりやすい、学習しやすいと言われており、文法がシンプルで、挫折しづらい言語
  • 汎用性が高い
  • 将来性抜群(AI・データサイエンス分野で需要拡大)

できること

  • 業務自動化ツール
  • Webアプリケーション
  • データ分析
  • AI・機械学習(将来的に)

3位:PHP(学習難易度:★★☆☆☆)

おすすめ理由

  • PHPの記述は可読性に優れるので、初心者向けの言語としても知られています
  • Web開発に特化
  • 求人数が多い

できること

  • Webサイト開発
  • ECサイト構築
  • CMS(WordPress等)カスタマイズ

4位:Java(学習難易度:★★★☆☆)

おすすめ理由

  • Javaは他言語への応用が利きやすい
  • 企業での需要が最も高い
  • 安定性・セキュリティに優れる

できること

  • 企業の基幹システム
  • Webアプリケーション
  • Androidアプリ

5位:HTML/CSS(学習難易度:★☆☆☆☆)

おすすめ理由

  • プログラミングの入門として最適
  • 数学知識が一切不要
  • 視覚的な成果が得られやすい

できること

  • Webページのデザイン・レイアウト
  • ランディングページ作成

文系エンジニアが目指すべき職種ランキング

1位:フロントエンドエンジニア

なぜ文系におすすめ?

  • デザイン感覚が活かせる
  • ユーザー視点での思考が重要
  • 数学的な処理が少ない

主な業務

  • Webサイトの見た目と動作の実装
  • ユーザビリティの改善
  • レスポンシブデザインの実装

平均年収:400-600万円

2位:Webエンジニア(フルスタック)

なぜ文系におすすめ?

  • 幅広いスキルが身につく
  • ビジネス側との橋渡し役
  • クリエイティブな要素が多い

主な業務

  • Webアプリケーションの開発
  • データベース設計
  • API開発

平均年収:450-700万円

3位:インフラエンジニア

なぜ文系におすすめ?

  • 未経験者向けの求人も多い
  • 資格取得でスキル証明しやすい
  • 安定した需要

主な業務

  • サーバー構築・運用
  • ネットワーク設計
  • クラウド環境構築

平均年収:400-650万円

4位:システムエンジニア(SE)

なぜ文系におすすめ?

  • コミュニケーション能力はシステムエンジニアに不可欠
  • 要件定義など上流工程に関われる
  • プロジェクト管理スキルが活かせる

主な業務

  • システム要件の分析・設計
  • プロジェクト管理
  • クライアント折衝

平均年収:450-750万円

3ヶ月でエンジニア転職を目指す実践ロードマップ

【事前準備】なぜエンジニアになりたいかを明確化

最重要タスク:転職理由の言語化

  1. 現在の不満点を具体化
    • 「やりがいがない」→「ルーティンワークが多く、創造性を発揮できない」
    • 「将来性に不安」→「AI化で職種自体が縮小傾向にある」
  2. エンジニアに惹かれる理由
    • 技術で課題解決したい
    • 創造的な仕事がしたい
    • リモートワークで柔軟に働きたい
  3. 5年後のビジョン
    • どんなエンジニアになりたいか
    • 何を作りたいか

【1ヶ月目】基礎学習フェーズ

目標:プログラミングの基本概念を理解し、簡単なWebページを作成

Week 1-2:IT基礎知識

  • 学習内容
    • IT用語学習(1日10個、計100個)
    • プログラミング概要理解
    • HTML/CSS基礎
  • 使用教材
    • Progate(HTML/CSS初級編)
    • ドットインストール(初心者向け)
  • 目標成果物:自己紹介ページ

Week 3-4:JavaScript入門

  • 学習内容
    • JavaScript基本文法
    • DOM操作
    • 簡単な動的機能実装
  • 目標成果物:電卓アプリ、じゃんけんゲーム

【2ヶ月目】実践スキル習得フェーズ

目標:実際のWebアプリケーションを作成できるレベルに到達

Week 5-6:フレームワーク学習

  • 学習内容
    • React.js基礎(JavaScriptの場合)
    • または Laravel基礎(PHPの場合)
  • 目標成果物:Todoアプリ

Week 7-8:バックエンド基礎

  • 学習内容
    • データベース(SQL基礎)
    • サーバーサイド基礎
    • API連携
  • 目標成果物:データベース連携したアプリ

【3ヶ月目】転職準備フェーズ

目標:転職活動を開始し、面接を受けられる状態にする

Week 9-10:ポートフォリオ作成

  • 必須項目
    • 3つ以上の作品
    • ソースコードの公開(GitHub)
    • 技術説明ドキュメント
    • レスポンシブ対応

Week 11-12:転職活動準備

  • 必須タスク
    • 職務経歴書作成(IT用語を適切に使用)
    • GitHub整理
    • 技術面接対策
    • 転職エージェント登録

文系エンジニアの年収実態と理系との比較

文系・理系による年収差はほとんどない

リクナビが行ったアンケート結果によると文系、理系の年収はほぼ同じ水準だということが示されています。

エンジニア全体の年収水準

転職サービス「doda」の調査によると、2022年のITエンジニアの平均年収は442万円です。年代別平均年収は20代で367万円・30代で495万円・40代で621万円・50代以上で694万円となっています。

文系エンジニアの年収アップ戦略

短期戦略(1-3年):専門スキルの習得

  • 特定技術の深掘り:React、Vue.js、AWSなど
  • 資格取得:AWS認定、基本情報技術者など
  • 英語力向上:技術英語の読解力向上

中期戦略(3-5年):領域の拡大

  • フルスタック化:フロント・バックエンド両方
  • マネジメント経験:チームリード、プロジェクト管理
  • 業界知識:金融、医療、EC等の業界知識

長期戦略(5年以上):付加価値の創出

  • アーキテクト職:システム全体の設計
  • コンサルタント職:技術とビジネスの架け橋
  • プロダクトマネージャー:文系の強みを最大活用

文系エンジニアが避けるべき転職活動の落とし穴

落とし穴1:「未経験歓迎」の罠

注意すべき求人

  • 「未経験歓迎」でも実際は経験者優遇
  • SES(客先常駐)ばかりで技術力が身につかない
  • 研修期間が短すぎる(1ヶ月未満)

見極めポイント

  • 研修内容の具体性
  • メンター制度の有無
  • 先輩社員のキャリアパス

落とし穴2:技術軽視の姿勢

NGな思考

  • 「コミュニケーション能力があれば技術は後から」
  • 「文系だから技術は詳しくなくても大丈夫」

正しい姿勢

  • 文系の強みを活かしつつ、技術力も確実に身につける
  • 理系に負けない技術力を目指す

落とし穴3:自己PRの方向性ミス

NGな自己PR

  • 「文系ですが頑張ります」(弱みアピール)
  • 「人とのコミュニケーションが得意です」(当たり前すぎる)

効果的な自己PR

  • 「文系の論理的思考力と技術力を組み合わせて〇〇を実現したい」
  • 具体的な作品やスキルを示す

文系エンジニアの成功事例

成功事例1:営業職からフロントエンドエンジニアへ

Before

  • 年齢:28歳
  • 職歴:営業職5年
  • 課題:ノルマに追われる日々、将来性への不安

転職プロセス

  • 学習期間:4ヶ月(夜間・休日)
  • 学習内容:JavaScript、React、ポートフォリオ3作品
  • 転職活動:2ヶ月、応募10社、面接5社、内定2社

After

  • 転職先:自社サービス開発企業
  • 年収:350万円(前職より50万円ダウン)→2年後500万円
  • 働き方:フルリモート、フレックス制

成功要因

  • 営業経験を活かしたユーザー視点での開発
  • コミュニケーション能力でチーム内の調整役
  • 継続的な技術学習

成功事例2:事務職からWebエンジニアへ

Before

  • 年齢:26歳
  • 職歴:一般事務3年
  • 課題:ルーティンワーク、スキルアップの機会なし

転職プロセス

  • 学習期間:6ヶ月(業務効率化から開始)
  • 学習内容:Python、Excel自動化、Webアプリ開発
  • 転職活動:3ヶ月、紹介経由で転職成功

After

  • 転職先:中小企業のシステム部門
  • 年収:320万円→3年後600万円
  • 役割:社内システムの企画・開発・運用

成功要因

  • 業務経験を活かした実用的なシステム開発
  • 継続的なスキルアップ
  • 社内でのポジション確立

まとめ:文系エンジニアとして成功するための5原則

原則1:文系であることを劣等感に感じない

文系であることを引け目に感じる必要は全くありません。現実に文系出身の優秀なエンジニアは数多く存在します。

原則2:文系の強みを最大限活かす

コミュニケーション能力、読解力、論理的思考力など、文系で培ったスキルは間違いなくエンジニアとしての武器になります。

原則3:技術力は確実に身につける

文系だからといって技術力を軽視してはいけません。理系に負けない技術力を身につけることで、真の意味で「文系の強みを活かしたエンジニア」になれます。

原則4:継続的な学習を怠らない

常に情報がアップデートされるIT業界では、最新の技術や情報を取り入れておく必要があります。文系で培った学習能力を活かして、継続的にスキルアップしましょう。

原則5:目的を明確にして戦略的にキャリアを築く

「なぜエンジニアになりたいのか」「どんなエンジニアになりたいのか」を明確にし、そこから逆算してスキル習得や転職活動を進めることが成功の鍵です。


文系出身であることは決してハンデではありません。むしろ、理系にはない強みを持っているのが文系出身者です。この記事で紹介した方法を実践すれば、必ずエンジニアとして成功できます。

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