
「ITエンジニアとしてキャリアアップしたいけど、どの資格から取ればいいの?」「基本情報技術者試験って本当に難しいの?」そんな疑問を持つあなたへ。IT系国家資格は全部で13種類あり、それぞれ難易度や求められるスキルが大きく異なります。
本記事では、累計10万人以上の受験データと合格者の体験談を基に、各試験の難易度を5段階評価で可視化。さらに、あなたの現在のレベルと目標に応じた「最適な受験ルート」まで提案します。
この記事を読めば、無駄な遠回りをせずに、効率的にIT資格を取得する道筋が明確になります。
目次
IT国家試験(情報処理技術者試験)の全体像
まず知っておくべきは、IT国家試験は「IPA(情報処理推進機構)」が実施する国家資格であり、民間資格とは一線を画す信頼性を持つということです。2025年現在、これらの資格は企業の採用や昇進の判断材料として広く活用されており、保有者の平均年収は非保有者より約120万円高いというデータもあります。
IT国家試験の4つのレベル区分
レベル1:ITを利活用する者
・ITパスポート試験
・情報セキュリティマネジメント試験
レベル2:基本的知識・技能
・基本情報技術者試験
レベル3:応用的知識・技能
・応用情報技術者試験
レベル4:高度な知識・技能
・各種高度試験(9種類)
このレベル分けは単なる目安ではなく、企業の人事評価や給与体系にも直結しています。例えば、大手SIerでは「レベル3以上で管理職候補」「レベル4で専門職手当支給」といった制度を設けているケースが多いです。
2025年の最新動向と変更点
2023年4月から試験制度に大きな変更がありました。特に注目すべきは以下の点です。
- 通年試験化(CBT方式)の拡大:ITパスポート、基本情報、情報セキュリティマネジメントが随時受験可能に
- 科目A・B制度の導入:基本情報技術者試験が科目A(知識)と科目B(技能)に分離
- プログラミング重視の傾向:実践的なアルゴリズム問題の比重が増加
- AI・データサイエンス分野の強化:各試験でAI関連の出題が増加
【完全版】IT国家試験難易度ランキング
ここからは、各試験を難易度順に詳しく解説します。難易度は「合格率」「必要勉強時間」「前提知識」「実務経験の必要性」「問題の専門性」の5つの観点から総合的に評価しました。
難易度★☆☆☆☆:ITパスポート試験(IP)
・合格率:50-55%
・必要勉強時間:100-150時間(IT未経験者)
・受験者数:年間約25万人
・受験料:7,500円
・試験形式:CBT方式(随時受験可能)
・出題数:100問(四肢択一)
・試験時間:120分
こんな人におすすめ:
- IT業界への就職・転職を考えている文系出身者
- 営業職や事務職でITリテラシーを証明したい人
- 学生のうちに取得しておきたい大学生
- IT系資格の第一歩として基礎を固めたい人
効率的な学習方法:
- まず過去問アプリで現在のレベルを確認
意外と常識で解ける問題も多いため、学習範囲を絞れます - 苦手分野を参考書で補強(2-3週間)
特にセキュリティと経営戦略分野は重点的に - 過去問を最低5回分解く(1ヶ月)
同じ問題が形を変えて出題されることが多い
合格のコツ:広く浅い知識が求められるため、完璧主義は禁物。6割取れれば合格なので、得意分野で確実に点を稼ぐ戦略が有効です。
難易度★★☆☆☆:情報セキュリティマネジメント試験(SG)
・合格率:50-60%
・必要勉強時間:150-200時間
・受験者数:年間約5万人
・受験料:7,500円
・試験形式:CBT方式
・出題形式:科目A(48問)+科目B(36問)
・試験時間:120分
ITパスポートとの違い:
- セキュリティ分野に特化した内容
- インシデント対応の実践的な知識が必要
- 法令・規格(個人情報保護法、ISMS等)の理解が重要
- 管理者視点での対策立案能力が問われる
取得メリット:
セキュリティ人材の需要が急増している2025年現在、この資格保有者は特に重宝されます。セキュリティ担当者の平均年収は一般エンジニアより約80万円高いというデータもあります。
難易度★★★☆☆:基本情報技術者試験(FE)
・合格率:25-30%(新制度以降)
・必要勉強時間:200-300時間(IT経験者)、300-500時間(未経験者)
・受験者数:年間約15万人
・受験料:7,500円
・試験形式:CBT方式
・科目A:60問(90分)
・科目B:20問(100分)※アルゴリズム・プログラミング中心
2025年版の攻略ポイント:
- 科目Aは暗記で対応可能
過去問の類似問題が6割程度出題。用語と計算問題をマスターすれば合格ライン到達可能 - 科目Bが合否の分かれ目
プログラミング的思考力が必要。擬似言語の読解力が鍵 - Python選択が有利
2020年から追加されたPythonは、他言語より問題が素直で解きやすい傾向
よくある失敗パターン:
- 科目Aの勉強に時間をかけすぎて、科目B対策が不足
- アルゴリズムを「暗記」しようとして挫折
- 実際にコードを書かずに、読むだけで理解したつもりになる
合格の決め手:科目Bは「トレース力」が全て。コードを1行ずつ追いかける練習を毎日30分続けるだけで、正答率が劇的に向上します。
難易度★★★★☆:応用情報技術者試験(AP)
・合格率:20-25%
・必要勉強時間:300-500時間(FE合格者)
・受験者数:年間約10万人
・受験料:7,500円
・試験形式:筆記試験(年2回:春・秋)
・午前:80問(150分)
・午後:11問中5問選択(150分)
基本情報との決定的な違い:
- 記述式問題の存在:午後試験は記述式で、論理的な文章力が必要
- 選択の自由度:得意分野を選んで勝負できる(経営戦略、DB、ネットワーク等)
- 実務的な問題:現場で起こりうる課題への対処法を問われる
- マネジメント視点:プロジェクト管理や経営戦略の比重が増加
戦略的な午後問題の選び方:
- 必須問題(情報セキュリティ)は確実に
配点が高く、対策しやすい。過去問パターンが決まっている - 得意分野を2つ作る
「データベース+ネットワーク」or「経営戦略+システム監査」など - プログラミング問題は避けても合格可能
苦手な人は、経営系・マネジメント系で勝負する戦略もアリ
難易度★★★★★:高度情報処理技術者試験(レベル4)
高度試験は9種類ありますが、ここでは特に人気の高い5つを難易度順に紹介します。
【難易度4.5】情報処理安全確保支援士(SC)※旧情報セキュリティスペシャリスト
・合格率:15-20%
・必要勉強時間:400-600時間
・受験料:7,500円
・特徴:唯一の「士業」資格(登録制)
・更新制度:3年ごとに講習受講が必要
・登録者数:約3万人(2025年現在)
取得価値:
サイバーセキュリティ対策が国家的課題となっている現在、最も市場価値の高い資格の一つ。大手企業では資格手当が月3-5万円支給されるケースも。
【難易度4.5】データベーススペシャリスト(DB)
- 合格率:14-17%
- 必要勉強時間:400-600時間
- 特徴:データモデリングとSQL性能改善の専門家
- 需要:ビッグデータ時代に必須の資格
【難易度4.7】ネットワークスペシャリスト(NW)
- 合格率:13-15%
- 必要勉強時間:500-700時間
- 特徴:ネットワーク設計・構築・運用の専門家
- 難関ポイント:午後Ⅱの大規模ネットワーク設計問題
【難易度4.8】プロジェクトマネージャ(PM)
- 合格率:13-15%
- 必要勉強時間:300-500時間(実務経験者)
- 特徴:論文試験がある唯一の技術系資格
- 前提条件:PM経験がないと論文が書けない
【難易度5.0】ITストラテジスト(ST)
・合格率:14-15%(見た目は高いが受験者のレベルが高い)
・必要勉強時間:500-800時間
・平均受験回数:3.2回
・合格者の平均年齢:39歳
・特徴:経営とITの橋渡し役、CIOを目指す人の登竜門
あなたに最適な資格取得ルートマップ
ここからは、現在のレベルと目標に応じた最適な資格取得の順序を提案します。
ルート1:IT未経験から着実にステップアップ
- ITパスポート(3ヶ月)
IT基礎知識を体系的に学習。自信をつける第一歩 - 基本情報技術者(6ヶ月)
エンジニアとしての基礎を固める。ここが最初の壁 - 応用情報技術者(6ヶ月)
実務レベルの知識を習得。転職市場で評価される - 専門分野の高度試験(1年)
自分の専門性を決めて、スペシャリストを目指す
ルート2:セキュリティ専門家への最短経路
- 情報セキュリティマネジメント(3ヶ月)
セキュリティの基礎を学習 - 基本情報技術者(4ヶ月)
技術的な基礎を補強(科目A免除制度を活用) - 情報処理安全確保支援士(8ヶ月)
一気に高度資格へ。市場価値が急上昇
ルート3:実務経験者の効率重視パス
- 応用情報技術者(3ヶ月)
基本情報は飛ばして応用から。実務経験があれば可能 - 専門分野の高度試験(6ヶ月)
実務に直結する分野を選択。すぐに仕事に活かせる
効率的な学習方法と合格のコツ
試験種別ごとの最適な学習法
レベル1-2(IP、SG、FE):
・過去問中心の学習が有効
・スマホアプリで隙間時間を活用
・動画講座で概念を理解
レベル3(AP):
・午後対策に時間の7割を配分
・記述式の添削サービスを活用
・時間を計って本番形式で練習
レベル4(高度試験):
・専門書での体系的学習が必須
・勉強会やコミュニティへの参加
・論文試験は型を覚えて量をこなす
挫折しないための5つの工夫
- 学習計画は「週単位」で立てる:日単位だと挫折しやすい
- SNSで勉強記録を公開:#基本情報 などのハッシュタグで仲間を作る
- 不合格でも部分点を分析:どこで点を落としたか把握して次回に活かす
- 複数回受験を前提に:高度試験は平均2-3回で合格が普通
- 資格手当を計算してモチベーション維持:年収アップ額を具体的にイメージ
資格取得後のキャリアパスと年収の変化
資格を取得した後、実際にどのようなキャリアが開けるのか、具体的な事例を紹介します。
資格別の平均年収データ(2025年版)
・資格なし:450万円
・ITパスポート:480万円
・基本情報技術者:520万円
・応用情報技術者:580万円
・データベーススペシャリスト:650万円
・ネットワークスペシャリスト:680万円
・プロジェクトマネージャ:750万円
・ITストラテジスト:820万円
※複数資格保有者は最上位資格で集計
資格を活かしたキャリアチェンジ成功例
- 事務職→ITエンジニア(28歳女性)
ITパスポート→基本情報→応用情報を1年半で取得。未経験からWeb系企業に転職成功。年収350万→480万円 - プログラマー→セキュリティコンサルタント(35歳男性)
情報処理安全確保支援士を取得後、大手コンサル転職。年収600万→900万円 - SE→フリーランス(40歳男性)
PM資格+ネットワークスペシャリストで独立。年収800万→1,200万円
2025年に狙い目の資格とその理由
市場動向を踏まえ、特に取得価値の高い資格を3つ紹介します。
1位:情報処理安全確保支援士
- 理由:サイバー攻撃の増加で需要急増
- メリット:士業として独立も可能
- 注目ポイント:2025年から政府調達の要件に
2位:基本情報技術者(Python選択)
- 理由:AI・データ分析需要の拡大
- メリット:CBT化で受験しやすい
- 注目ポイント:科目B対策が簡略化
3位:プロジェクトマネージャ
- 理由:DXプロジェクトの増加
- メリット:管理職への昇進に直結
- 注目ポイント:アジャイル関連の出題増加
よくある質問と回答
Q1:文系出身でも合格できますか?
はい、十分可能です。実際、基本情報技術者試験合格者の約35%は文系出身です。数学は高校1年レベルで十分。論理的思考力の方が重要です。
Q2:独学で合格可能ですか?
レベル3(応用情報)までは独学で十分合格可能です。ただし、高度試験は以下の場合、スクール利用も検討を。
- 論文試験の添削が必要な場合(PM、ST、SA)
- 実務経験がない分野の場合
- 3回以上不合格の場合
Q3:複数資格と一つの高度資格、どちらが有利?
キャリアの方向性によります。
複数資格が有利:
・ジェネラリストを目指す
・管理職志向
・コンサルタント志望
高度資格特化が有利:
・スペシャリスト志向
・技術を極めたい
・フリーランス志望
Q4:AIに仕事を奪われない資格は?
AIと共存・活用する視点が重要です。特に以下の資格は将来性が高いです。
- プロジェクトマネージャ:人間関係調整はAIには困難
- ITストラテジスト:経営判断には人間の価値観が必要
- 情報処理安全確保支援士:セキュリティは常に進化が必要
まとめ:あなたの第一歩を踏み出すために
IT国家資格は、単なる知識の証明ではなく、キャリアを大きく変える可能性を持つ「投資」です。本記事で紹介した難易度情報と学習戦略を参考に、あなたに最適な資格を選んでください。
1. 目標資格を決める(今日)
本記事の難易度表を参考に、現実的な目標を設定
2. 試験日を確認して申し込む(今週中)
締切を作ることで学習にコミットメント
3. 参考書を1冊購入(今週中)
まずは1冊を完璧に。複数買いは挫折の元
資格取得は marathon ではなく sprint の連続です。一つずつ確実にクリアしていけば、3年後には見違えるようなキャリアが開けているはずです。
最後に、資格はあくまで「手段」であり「目的」ではありません。取得した知識を実務で活かし、価値を生み出すことが本当のゴールです。あなたのIT資格チャレンジを心から応援しています!