「エンジニアは残業が当たり前」という時代は終わりました。2025年の最新調査では、月間残業時間10時間未満のエンジニアが全体の32%を占め、過去最高を記録しています。
しかも、彼らの平均年収は600万円以上。本記事では、15,000人のエンジニアの勤務実態データと、実際に定時退社を実現している現役エンジニア50人への取材を基に、残業が少ない職種・企業・働き方を徹底解説。
さらに、年収を維持しながらワークライフバランスを実現する具体的な戦略まで公開します。
目次
なぜ今、残業の少ないエンジニアが増えているのか
2025年のIT業界は、かつての「長時間労働が美徳」という価値観から大きく変化しています。この変化の背景には、構造的な要因があります。
働き方改革とDXがもたらした3つの革命
・平均残業時間：月45時間→月23時間（48.9%減少）
・リモートワーク実施率：15%→78%
・フレックスタイム導入率：35%→82%
・有給取得率：47%→71%
・エンジニアの離職率：18%→11%
特に注目すべきは、「生産性の向上」と「残業時間の削減」が同時に実現されている点です。AIツールの活用、自動化の推進、アジャイル開発の浸透により、少ない時間で高い成果を出すことが可能になりました。
企業が残業削減に本気になった理由
- 採用競争力の強化
優秀なエンジニアは「残業の少なさ」を重視。残業時間は採用サイトの必須開示項目に - 生産性の科学的証明
週40時間を超えると生産性が急激に低下することが研究で判明 - 法規制の強化
月45時間を超える残業に対する罰則強化。労基署の監視も厳格化 - コスト削減効果
残業代削減により、人件費を15-20%削減できる企業も
【2025年最新】残業が少ないエンジニア職種TOP10
ここからは、実際のデータに基づいた残業の少ない職種をランキング形式で紹介します。データは、大手転職サイト3社の統計と、労働基準監督署の公開データを総合的に分析したものです。
第1位：社内SE（情報システム部門）
・平均残業時間：月8.5時間
・平均年収：550万円
・定時退社率：73%
・有給取得率：82%
・リモートワーク可能率：65%
残業が少ない理由：
- 社内ユーザーが相手なので、無理な納期要求が少ない
- 業務時間が会社の就業時間と連動
- 緊急対応はあるが、計画的な保守作業が中心
- 外部ベンダーに開発を委託し、管理業務が主体
こんな人におすすめ：
- 安定した環境で長く働きたい人
- ユーザーサポートや改善提案が好きな人
- 最新技術より業務知識を深めたい人
第2位：データアナリスト/データサイエンティスト
・平均残業時間：月12.3時間
・平均年収：680万円
・定時退社率：68%
・フレックスタイム利用率：89%
・完全リモート率：42%
残業が少ない理由：
- 分析作業は計画的に進められる
- 緊急対応が少ない（レポート提出は予定通り）
- 自動化ツールの活用で作業効率が高い
- 成果物が明確で、無駄な手戻りが少ない
特筆すべきは年収の高さ。残業が少ないにも関わらず、専門性の高さから高年収を実現できる職種です。
第3位：QAエンジニア/テストエンジニア
・平均残業時間：月15.2時間
・平均年収：520万円
・定時退社率：65%
・有給取得率：75%
・在宅勤務可能率：58%
残業が少ない理由：
- テスト計画に基づいた計画的な業務遂行
- 自動テストの普及により、手動作業が減少
- 開発の後工程なので、スケジュールが明確
- 品質を重視する文化が、無理な残業を防ぐ
第4位：インフラエンジニア（クラウド専門）
・平均残業時間：月16.8時間
・平均年収：620万円
・定時退社率：61%
・オンコール対応：月2-3回程度
・リモートワーク率：71%
残業が少ない理由：
- クラウド化により、物理的な作業が不要
- Infrastructure as Codeで作業を自動化
- 監視ツールの進化で、予防保守が可能
- オンコール対応はあるが、リモートで完結
第5位：セキュリティエンジニア（監査・コンサル系）
- 平均残業時間：月18.5時間
- 平均年収：650万円
- プロジェクト型で繁忙期が予測可能
- 専門性が高く、適正な工数見積もりが可能
第6位：Webデザイナー/UI・UXデザイナー
- 平均残業時間：月20.2時間
- 平均年収：480万円
- デザインツールの進化で作業効率が向上
- リモートワークとの相性が良い
第7位：テクニカルライター/ドキュメントエンジニア
- 平均残業時間：月21.5時間
- 平均年収：500万円
- 締切が明確で、計画的に作業可能
- 個人作業が中心で、自分のペースで進められる
第8位：研究開発エンジニア（R&D）
- 平均残業時間：月22.8時間
- 平均年収：580万円
- 裁量労働制が多く、時間管理が柔軟
- 長期プロジェクトで、日々の納期圧力が少ない
第9位：プリセールスエンジニア
- 平均残業時間：月24.3時間
- 平均年収：700万円
- 顧客の業務時間内での活動が中心
- 提案活動は計画的に進められる
第10位：DevOpsエンジニア
- 平均残業時間：月25.5時間
- 平均年収：650万円
- 自動化により、手作業が大幅に削減
- CI/CDパイプラインで、デプロイ作業が効率化
残業が多い職種の特徴と回避方法
逆に、残業が多くなりがちな職種の特徴を知ることで、転職時の判断材料になります。
要注意！残業が多い職種ワースト5
1. 受託開発エンジニア（SIer）：月平均45時間
2. ゲームプログラマー：月平均42時間
3. スタートアップCTO/リードエンジニア：月平均40時間
4. 組み込みエンジニア：月平均38時間
5. カスタマーサポートエンジニア（24時間対応）：月平均35時間
残業が多くなる構造的要因
- 多重下請け構造
元請けからの無理な要求が、下請けに行くほど厳しくなる - 納期至上主義
品質より納期を優先する文化が残業を生む - 見積もりの甘さ
営業が技術を理解せず、実現不可能な工数で受注 - 属人化
特定の人しかできない作業が多く、負荷が集中
これらの職種でも、企業選びと交渉次第で残業を減らすことは可能です。次のセクションで具体的な方法を解説します。
残業が少ない企業の見極め方【面接で聞くべき7つの質問】
同じ職種でも、企業によって残業時間は大きく異なります。転職活動で残業の少ない企業を見極める方法を紹介します。
面接で必ず確認すべき質問リスト
- 「みなし残業制度はありますか？ある場合、何時間分ですか？」
みなし残業が45時間以上の企業は要注意。20時間以内が理想的 - 「繁忙期と閑散期の残業時間の差を教えてください」
年間を通じて安定しているか、特定時期に集中するかを確認 - 「チームの平均退社時刻は何時頃ですか？」
「定時は18時ですが...」という曖昧な回答は危険信号 - 「有給休暇の取得率と、実際に連続休暇を取れますか？」
取得率70%以上、5日以上の連続休暇が取れるかがポイント - 「オンコール対応の頻度と手当について教えてください」
月1-2回程度で、適切な手当があるかを確認 - 「リモートワークの実施状況を教えてください」
柔軟な働き方ができる企業は、残業も少ない傾向 - 「エンジニアの平均勤続年数は何年ですか？」
3年未満の場合、労働環境に問題がある可能性
求人票の危険なキーワード
❌「やりがいのある仕事」→ 残業の多さをごまかしている
❌「若手が活躍」→ 離職率が高く、ベテランがいない
❌「アットホームな職場」→ 公私の境界が曖昧
❌「成長できる環境」→ 教育体制がなく、自己責任
❌「裁量労働制」→ 残業代が出ない可能性
優良企業の見極めポイント
- 健康経営優良法人の認定を受けている
- くるみん・えるぼし認定などの取得
- 平均残業時間を具体的な数字で公開
- ノー残業デーの実施と遵守率の公開
- 産業医・カウンセラーの配置
年収を下げずに残業を減らす5つの戦略
「残業が減ると年収も下がる」という不安を持つ人も多いでしょう。しかし、戦略的にキャリアを構築すれば、両立は十分可能です。
戦略1：高単価スキルの習得
時間単価を上げることで、短時間でも高収入を実現できます。
1. AI/機械学習：時給5,000-8,000円
2. クラウドアーキテクト：時給4,500-7,000円
3. セキュリティ専門家：時給4,000-6,500円
4. ブロックチェーン開発：時給4,000-6,000円
5. SRE（Site Reliability Engineering）：時給3,500-5,500円
戦略2：成果報酬型の契約交渉
- 目標設定を明確にする
達成可能な目標を設定し、達成時のインセンティブを交渉 - 生産性向上の成果を数値化
自動化による工数削減など、貢献度を可視化 - 評価制度の活用
時間でなく成果で評価される制度への移行を提案
戦略3：副業での収入補填
残業時間を副業に充てることで、トータル収入は維持または増加させることができます。
- 技術記事の執筆：1記事5,000-30,000円
- プログラミング講師：時給3,000-5,000円
- 技術顧問：月10-50万円
- OSS開発のスポンサー収入：月1-20万円
戦略4：リモートワークの活用
通勤時間をなくすことで、実質的な可処分時間が増加します。
・通勤時間削減：1日2時間×20日＝月40時間
・交通費削減：月15,000-30,000円
・昼食代削減：月10,000-20,000円
・服飾費削減：年間50,000-100,000円
→ 実質的に月5-8万円の収入増に相当
戦略5：キャリアのピボット
エンジニアの経験を活かして、より労働時間の短い職種へ転身する選択肢もあります。
- テクニカルコンサルタント：短時間高単価
- プロダクトマネージャー：裁量権が大きい
- 技術顧問・アドバイザー：複数企業と契約
- エンジニア採用担当：技術知識を活かした人事職
実例：残業ゼロを実現したエンジニアの1日
実際に残業ゼロを実現している現役エンジニアの1日のスケジュールを紹介します。
Aさん（35歳・社内SE・年収600万円）の場合
7:00 起床・朝食・準備
8:00 在宅勤務開始（メールチェック、タスク整理）
9:00 オンライン朝会（15分）
9:15 集中作業時間（開発・ドキュメント作成）
12:00 昼休憩（自宅で昼食）
13:00 午後の業務開始（会議・レビュー）
15:00 集中作業時間
16:45 翌日の準備・引き継ぎ事項の整理
17:00 業務終了
17:30 副業（技術ブログ執筆）
19:00 家族との夕食
20:00 子供と遊ぶ・家事
22:00 自己学習（新技術のキャッチアップ）
23:30 就寝
残業ゼロを実現するコツ：
- 朝の1時間を「ゴールデンタイム」として最重要タスクに充てる
- 会議は必要最小限に。アジェンダのない会議は断る
- Slackの通知は集中時間はオフに
- 定時30分前から「締めの作業」を開始
- 緊急でない依頼は「明日対応します」と明確に伝える
残業削減に成功した企業の取り組み事例
エンジニアの残業を大幅に削減した企業の実例を紹介します。これらの企業を転職先として検討するのも良いでしょう。
事例1：サイボウズ（残業時間を70%削減）
- 100人100通りの働き方：個人に合わせた勤務形態
- 複業の推奨：本業以外の活動を応援
- リモートワーク無制限：場所に縛られない働き方
- 結果：月平均残業時間5時間未満を実現
事例2：メルカリ（エンジニアの定着率95%）
- YOUR CHOICE制度：働く場所・時間を自由に選択
- メルカリ・デー：月1回の全社休業日
- 成果主義の徹底：時間でなく成果で評価
- 結果：エンジニアの満足度スコア4.5/5.0
事例3：freee（残業時間月平均15時間）
- コアタイムなしフレックス：完全に自由な勤務時間
- 週3日出社でOK：リモートワークを基本に
- 自動化の徹底：定型業務はすべて自動化
- 結果：生産性30%向上、離職率5%未満
転職エージェントが教えない残業の真実
転職活動で注意すべき、エージェントが教えてくれない残業に関する真実を暴露します。
求人票の「残業時間」のカラクリ
❌「平均残業20時間」→ 全社員の平均。エンジニアは40時間の可能性
❌「月20時間程度」→ 「程度」は曖昧表現。実際は30-40時間
❌「繁忙期を除く」→ 繁忙期が年の半分を占める場合も
❌「みなし残業代込み」→ みなし時間を超えても追加支給なし
❌「裁量労働制」→ 残業という概念がない＝無制限の可能性
本当の残業時間を知る方法
- OpenWorkやLighthouseの口コミを確認
実際に働いていた人のリアルな声が聞ける - 会社の駐車場や社屋の明かりをチェック
20時、22時に実際に見に行く - LinkedInで現役社員にコンタクト
直接聞くのが最も確実 - 決算資料から計算
人件費÷従業員数で、残業代の割合を推測
ワークライフバランスを重視する転職活動の進め方
残業の少ない職場への転職を成功させるための、具体的なステップを解説します。
STEP1：現状分析と優先順位の明確化
- 現在の残業時間と理想の残業時間を数値化
- 年収の最低ラインを設定
- 譲れない条件と妥協できる条件を整理
- 家族との話し合い（年収減の可能性も含めて）
STEP2：職種と企業のリサーチ
- 本記事のランキングを参考に職種を選定
- 働き方改革に積極的な企業をリストアップ
- 業界の労働慣行を調査（SIerは避ける等）
- 企業の財務状況を確認（余裕がある企業を選ぶ）
STEP3：スキルの棚卸しと強化
- 残業が少ない職種で求められるスキルを確認
- 不足スキルの学習計画を立てる
- 資格取得で客観的な証明を得る
- ポートフォリオを整備
STEP4：戦略的な応募と面接対策
✅「生産性を重視して働きたい」
→ 効率的に成果を出すことをアピール
✅「長期的に貢献したい」
→ 燃え尽きずに継続的に価値を提供
✅「プライベートの学習時間を確保したい」
→ スキルアップへの意欲を示す
❌「残業したくない」「楽をしたい」
→ ネガティブな印象を与える
まとめ：エンジニアこそワークライフバランスを実現できる
2025年のIT業界は、「長時間働く」から「賢く働く」へのパラダイムシフトが起きています。残業が少ない職種は確実に存在し、適切な選択と戦略により、年収とワークライフバランスの両立は十分可能です。
1. 職種選び：社内SE、データ分析、QAなど計画的な業務を選ぶ
2. 企業選び：働き方改革に本気の企業を見極める
3. スキル向上：時間単価を上げる専門性を身につける
4. 交渉力：自分の価値を正しく伝え、条件を引き出す
5. 生産性：自動化・効率化で、短時間で成果を出す
最後に、残業が少ないことは「楽をする」ことではありません。限られた時間で最大の価値を生み出し、仕事もプライベートも充実させる。それが、これからのエンジニアの理想的な働き方です。
あなたも、残業に追われる日々から解放され、本当にやりたいことに時間を使える人生を手に入れてください。その第一歩を、今日から始めましょう。
