
「35歳、非IT企業の社内SE。日々の業務はVBAでのExcel改修、SQLでのデータ抽出、そして基幹システム(ERP)の運用保守……。」
「開発業務といっても、その実態はベンダーコントロール。要件をまとめてベンダーに投げ、上がってきたものの受け入れテストをする毎日。」
世間では「DX(デジタルトランスフォーメーション)」や「リスキリング」が叫ばれ、同期がAWSやPythonを学んでいると聞くと、「自分には“エンジニア”としての専門性がない」「このままでは市場価値がないのでは」と、強烈な焦りを感じていませんか?
そして、こう考えているかもしれません。 「今からでも、プログラミングスクールに通ってReactやJavaを学ぶべきだろうか?」 「でも、30代後半から“開発未経験”として、20代の若手と同じ土俵で戦えるのだろうか?」
最初に、厳しい現実をお伝えしなければなりません。
【悲報】
30代後半のあなたが、今から「プログラミングスキル(コードを書く力)」だけで20代の若手と勝負しようとするのは、戦略として『手遅れ』です。
「悲報」は、実は「朗報」です。
なぜなら、その「手遅れ」だという事実に早く気づくことこそが、あなたが無駄な努力を避け、30代後半からでも年収800万円以上を狙える「正しいキャリア戦略」をスタートさせる第一歩だからです。
この記事では、なぜ社内SEが今からコーダーを目指すべきではないのか、そして、あなたの「ベンダーコントロール経験」こそが最強の武器である理由と、その価値を最大化する3つのキャリアパスを徹底的に解説します。
この記事で解決できる悩み
- 30代後半・社内SE。「開発スキルなし」で市場価値に焦っている…
- ベンダーコントロールばかりで「エンジニア」と名乗れない…
- 今からプログラミングを学ぶべきか、本気で悩んでいる
- 自分の「業務知識」や「調整スキル」がどう評価されるか知りたい
- コードが書けなくても、年収を上げるキャリアパスが知りたい
目次
なぜ、30代後半の社内SEが「今からプログラミング」では手遅れなのか?

「学習に手遅れはない」というのは、趣味の世界での話です。キャリア戦略において「手遅れ」とは、「投下した時間とコストに対して、市場が評価するリターンが著しく低い」状態を指します。
30代後半の社内SEが、今から「純粋なプログラミングスキル」で勝負しようとすることが、なぜ非効率(=手遅れ)なのか。3つの明確な理由があります。
理由1:戦う「土俵」が根本的に間違っている
あなたが今からReactやGoを学び、Web系開発者として転職しようとすると、誰と競合になるか想像してみてください。
答えは、「20代前半で、情報系学部を卒業し、最新技術を呼吸するように吸収している若手エンジニア」です。
彼らはプログラミングの学習速度、体力、そして「ポテンシャル採用」という強力なカードを持っています。30代後半のあなたが、彼らと同じ「ジュニア開発者」の枠で、同じ土俵で戦うのは、戦略としてあまりにも分が悪すぎます。
理由2:学習の「コストパフォーマンス」が最悪
仮にあなたの現在の年収が650万円だとします。
プログラミングスクールに50万円〜100万円を投じ、1000時間の学習時間を確保し、晴れて「開発未経験」として転職できたとしましょう。その場合のオファー年収は、良くて400万~450万円です。
あなたは、年収を200万円以上下げて、そこから再び「年功序列ではない、実力主義のピラミッド」を登り直すことになります。このキャリアダウンを受け入れ、そこからV字回復させるのは、並大抵の努力では不可能です。
理由3:市場が30代に求める「価値」とのズレ
これが最も重要な理由です。
企業が30代後半・年収650万円以上の人材に求めるものは、「高速でコードが書けること」ではありません。
企業が求めるのは、
- ビジネス(事業)を理解し、ITでどう課題解決できるか「企画」できる力
- 複数のステークホルダー(経営層、業務部門、ベンダー)を「調整」できる力
- プロジェクトを「管理」し、予算・品質・納期に責任を持つ力
です。
あなたが今から必死に学ぼうとしている「プログラミングスキル」は、市場があなたに求めている「本質的な価値」と、大きくズレているのです。
【自己診断】あなたは「スキルなし」ではない。社内SEが持つ「最強の武器」5選

「開発スキルがない」と卑下するのは、今すぐにやめてください。
あなたが「スキルなし」と思い込んでいるのは、IT業界のピラミッドの一部(開発者目線)しか見ていないからです。ビジネス全体から見れば、あなたが日々「雑務」だと思っている業務こそ、企業が最も欲しがる「高単価スキル」なのです。
あなたの市場価値を再認識するために、5つの「最強の武器」を棚卸ししましょう。
武器1:圧倒的な「業務知識(ドメイン知識)」
あなたが思っていること:「ウチの会社の経理フローに詳しいだけ…」
市場の評価:「経理・会計の“業務プロセス”を深く理解している人材」
Web系開発者が「ユーザー(この場合は経理部)が何を言っているか分からない」と悩む一方、あなたは「月末の締処理の、あのデータの流れのことね」と瞬時に理解できます。この「業務を翻訳できる能力」は、DX推進において最も希少なスキルです。
武器2:「ベンダーコントロール」という名の“プロジェクトマネジメント”
あなたが思っていること:「ベンダーに丸投げしてるだけ…」
市場の評価:「マルチベンダーを管理し、要求仕様を伝え、品質と納期を担保する“PjM/PMO”スキル」
ベンダーを“コントロール”するのは、簡単なことではありません。曖昧な要求を仕様に落とし込ませ、スケジュールを監視し、時には(開発者から嫌われる)修正依頼を突き返す。これは、立派なプロジェクトマネジメント(PjM)そのものです。
武器3:「社内調整」という名の“要件定義”スキル
あなたが思っていること:「板挟みになって調整する、面倒な仕事…」
市場の評価:「経営層の『やりたい』と現場の『できない』を調整し、現実的な『システム要件』に落とし込む“最上流エンジニア”のスキル」
技術的に不可能な要求をいなし、現場が本当に求めている機能を引き出し、システムとして着地させる。この「ビジネスとITの翻訳」こそ、AIに代替されない最上流の仕事です。
武器4:「IT資産管理」という名の“ITガバナンス”視点
あなたが思っていること:「ライセンス管理やPCキッティング…」
市場の評価:「セキュリティ、コンプライアンス、IT予算全体を俯瞰し、全社のIT資産を最適化する“ITガバナンス/TCO”の視点」
開発者(ベンダー)は、作ることしか考えません。しかしあなたは、「そのサーバー代は誰が払うのか」「個人情報保護法はクリアしているか」「既存のシステムと連携できるか」を常に考えています。この全社最適の視点は、経営層に近いほど重宝されます。
武器5:「ERP運用保守」という名の“基幹システム知見”
あなたが思っていること:「レガシーなシステムの面倒見…」
市場の評価:「SAP/Oracle等の基幹システム(ERP)の構造を理解し、企業の根幹データを扱える信頼性」
企業の「カネ・モノ・ヒト」の動きを司る基幹システムの知見は、極めて専門性が高いスキルです。特にSAPなどの経験は、引く手あまたの高単価フリーランス(後述)にも繋がります。
気づきましたか?
あなたが「スキルなし」と思っていた経験は、すべて「ITコンサルタント」や「プロジェクトマネージャー」「DX推進担当者」が、まさに今、現場で求められているスキルそのものなのです。
30代後半から市場価値を最大化する「3つの高単価キャリア戦略」

あなたの「最強の武器」を認識できたところで、その価値を最大化する(=年収を上げる)ための、現実的な3つのキャリア戦略を提示します。
目指すのは「コーダー」ではありません。「マネージャー」か「スペシャリスト」です。
戦略1:事業会社(DX推進・IT企画)への転職
概要: あなたの「業務知識」と「社内調整力」を武器に、よりIT投資に積極的な「事業会社」のDX推進部門やIT企画室に移る道。
役割: ベンダーコントロールがメインなのは変わらないかもしれませんが、より「攻めのIT」(例:SFA/CRM導入、データ分析基盤構築)を「企画」する立場になれます。
メリット: ワークライフバランスを保ちつつ、経営に近い立場でIT戦略に携われる。
向いている人: 現場(業務部門)の課題解決にやりがいを感じる人。
狙うべき企業: 非IT企業(製造、金融、小売)だがDXに積極的な大手企業、または急成長中のメガベンチャー。
この戦略で重要なのは、「社内SE」という同じ職種でも、「守りのIT(運用保守)」から「攻めのIT(DX推進)」へ、評価してくれる会社に移ることです。
社内SE転職に特化したエージェントを活用する
社内SEの求人は非公開(エージェント独占)であることが非常に多いです。特に「攻めのIT」を担うDX推進室のようなポジションは、一般の転職サイトには出てきません。
「社内SE転職ナビ」のような、この分野に特化したエージェントは、各企業のIT部門の「リアルな内情」(例:攻めのITに予算を使っているか、ベンダー丸投げ体質か)を熟知しています。

戦略2:ITコンサルタント(PM/PMO)への転職
概要: あなたの「ベンダーコントロール(PjM)」と「要件定義」スキルを武器に、ITコンサルティングファームやSIerのPM/PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)に転職する道。
役割: 顧客(事業会社)側に入り込み、複数のベンダーを束ね、大規模プロジェクトを成功に導く「舵取り役」です。
メリット: 年収が最も上がりやすい(800万〜1200万)キャリアパス。
向いている人: 調整力・管理能力に自信がある人。ロジカルシンキングが得意な人。
デメリット: ワークライフバランスは、事業会社よりハードになる傾向がある。
「コンサルなんて無理」と思うかもしれませんが、コンサルタントもいきなり戦略は作れません。彼らも、あなたの「業務知識」や「ベンダー管理の泥臭い経験」を欲しています。
ITコンサルタントやPMOは、一切コードを書きません。彼らの武器は「Excel(課題管理表)」「PowerPoint(提案書)」「Project(WBS)」そして「コミュニケーション能力」です。あなたのスキルセットと完全に一致します。
戦略3:ERP/SaaSスペシャリスト(専門家)への転職
概要: もしあなたが「技術的な専門性」も持ちたいと考えるなら、この道です。「VBA」や「SQL」ではなく、あなたが運用している「ERP(SAPなど)」や、今後導入する「SaaS(Salesforceなど)」の“専門家”になる道です。
役割: 特定の製品(例:SAP)に関する深い業務知識と技術知識(設定・カスタマイズ)を持ち、導入・運用をリードする。
メリット: 「業務知識」×「特定プロダクトの専門性」という、極めて希少な人材になれる。フリーランスとして独立もしやすく、高単価(月単価100万以上)を狙える。
向いている人: ひとつのシステムを深く掘り下げるのが好きな人。
デメリット: そのプロダクトの需要にキャリアが左右される(ただしSAP, Salesforceは安泰)。
もし、あなたの会社でSAPを使っているなら、あなたはすでに金脈を掘り当てています。SAPコンサルタントは、開発経験がなくても「業務モジュール(FI/CO, SD/MMなど)の知見」だけで年収1000万円を超えることが珍しくありません。
SAP経験者は、まず市場価値を確かめて
SAPの運用保守経験(ベンダーコントロールだけでもOK)がある方は、一度「SAPフリーランスバンク」のような専門エージェントに登録し、自分の経験がいくらの単価になるか聞いてみてください。今の年収との差に驚くはずです。

勘違いするな!「プログラミング学習」の“正しい”向き合い方

ここまで「プログラミングは手遅れ」と書きましたが、これは「“コーダー”を目指すな」という意味であり、「ITの学習を一切するな」という意味ではありません。
30代後半の社内SEが学ぶべきなのは、「自分で作るため」ではなく「ベンダーを正しく評価・管理するため」の知識です。
学ぶべきは「AWS/Azure」と「API」の概要
あなたが今から学ぶべきは、Reactのコンポーネント設計ではありません。
クラウド(AWS/Azure):
なぜベンダーは「AWSにしましょう」と言うのか?
「オンプレミス」と「クラウド」で、見積もりの何が変わるのか?
「SaaS」「PaaS」「IaaS」の違いは何か?
これを理解していないと、ベンダーに言われるがまま高額な構成を組まれます。
API(データ連携):
なぜSaaS(Salesforce)と基幹システム(SAP)は「API連携」が必要なのか?
これを理解していないと、いまだに「CSVバッチ連携(手動)」の仕組みを提案され、業務効率化が止まります。
これらの知識は、「手を動かす」必要はありません。「概要」を理解し、ベンダーの技術選定や見積もりに対して「なぜそれが必要なんですか?」とツッコミが入れられるレベルで十分です。
「概要」を学ぶならスクールもアリ
独学が難しい「クラウド」や「AI」の概要を掴むために、スクールを活用するのは有効です。「テックアカデミー」などには「AWSコース」や「DXコース」といった、管理者向けの短期集中コースがあります。目的を間違えなければ、学習は武器になります。
あなたの「本当の価値」を理解する転職エージェント
30代後半・社内SEの転職が失敗する最大の理由は、「自分の価値を理解してくれないエージェント」に相談してしまうことです。
あなたの職務経歴書を見て、
「あ、開発経験ないんですね。じゃあ厳しいですね…」
「まずはプログラミングを学んで、ポートフォリオを作りましょう」
などと言ってくるエージェントは、今すぐ切ってください。彼らは、あなたの「業務知識」や「ベンダーコントロール」スキルを“カネ”に換える方法を知らない、未熟なエージェントです。
あなたが選ぶべきは、「ITコンサルタント」や「ハイクラスIT企画」の求人を専門に扱い、あなたの「業務経験」を正しく評価(翻訳)してくれるエージェントです。
MyVision

社内SE転職ナビ

30代社内SE(開発スキルなし)のよくある不安 Q&A
A. 結論、なれます。むしろ、コードを書かない人の方が多いです。
ITコンサルタントの仕事は、コードを書くこと(How)ではなく、顧客の課題を整理し、ITでどう解決するか(What/Why)を描くことです。そして、その実行を「管理」することです。
あなたの「ベンダーコントロール」や「社内調整」の経験こそが、まさにコンサルタントのコアスキルです。
A. 正しい戦略(戦略1, 2, 3)を選べば、上がる可能性が非常に高いです。
多くの社内SEは、一つの会社に長く勤めているため、自社の給与テーブルに縛られ、市場価値より「安く」評価されているケースが非常に多いです。
特に、あなたの「業務知識」や「PjMスキル」を正当に評価するコンサル業界や、DXに投資する大手事業会社に移れば、年収100万〜200万アップは十分に現実的なラインです。
A. 30代後半にとって、最大のリスクは「何もしないこと」です。
「安定している」=「変化していない」ということです。5年後、10年後、あなたの会社がIT投資を怠り、世の中のDXから取り残された時、そこで「ベンダーコントロール」しかしてこなかったあなたのスキルは、他の会社で通用するでしょうか?
安定している「今」だからこそ、より市場価値の高い(=変化に対応できる)「攻めのIT」や「コンサルティング」のスキルを身につけにいくことが、最大のリスクヘッジになります。
まとめ:その「悲報」は、あなたのキャリアを加速させる「朗報」である
30代後半の社内SEが、今からプログラミングを学ぶのは「手遅れ」です。
しかし、それは「あなたのキャリアが手遅れ」という意味ではありません。むしろ逆です。
「コーダーになる」という非効率な遠回りをやめて、「あなたの本当の価値」に気づく時が来た、という「朗報」なのです。
今日から、あなたの「武器」を再定義しよう
- あなたが持つ「最強の武器」は、コードではなく「業務知識」と「調整能力(PjMスキル)」。
- 目指すべきは「コーダー」ではなく、「ITコンサルタント」か「DX推進リーダー」。
- その武器の価値を正しく評価してくれる「ハイクラスエージェント」に相談する。
あなたは「スキルなし」などでは断じてありません。 あなたは、ビジネスとITの「翻訳家」であり、「管理者」であり、企業のDXを推進できる、最も市場価値の高い人材の一人です。
まずは、その価値が市場で「いくら」になるのか、客観的な評価を聞くことから始めてみませんか?





