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「自分の会社、もしかして3次請け?」と不安なあなたへ
給料が安い、スキルアップの機会がない、客先での立場が弱い。これらの悩みを抱えているなら、あなたの会社は3次請け以下のSES企業かもしれません。
IT業界の多重下請け構造は、エンジニアの待遇や成長機会に直接影響します。しかし、自分がどの階層にいるのかを正確に把握している人は意外と少ないのが現実です。
「そもそも3次請けって何?」「どうやって見分ければいいの?」「3次請けから抜け出す方法はあるの?」
この記事では、SESの3次請け企業を見分ける具体的な方法から、多重下請け構造から脱却するキャリア戦略まで、あなたが次の一歩を踏み出すために必要な情報をすべてお伝えします。
入社前の見極め方も解説するので、転職活動中の方にも役立つ内容です。
SESの多重下請け構造とは?3次請けの実態
まず、SES業界の多重下請け構造について正しく理解しておきましょう。
多重下請け構造の仕組み
IT業界では、大手企業(エンドユーザー)がシステム開発を外部に発注する際、以下のような階層構造が形成されます。
- エンドユーザー:実際にシステムを使用する企業(銀行、メーカー、官公庁など)
- 元請け(1次請け):エンドユーザーから直接案件を受注する大手SIer
- 2次請け:元請けから案件の一部を受注する中堅SIerやSES企業
- 3次請け:2次請けから更に案件を受注するSES企業
- 4次請け以下:さらに下層の企業(実質的に派遣に近い状態)
この構造において、下層に行くほど中間マージンが抜かれ、エンジニアの単価は下がっていきます。
3次請けの定義と特徴
3次請けとは、エンドユーザーから数えて3番目の階層にある企業を指します。つまり、エンドユーザー → 元請け → 2次請け → 3次請けという流れで仕事を受注している企業です。
3次請けの特徴として、エンドユーザーとの直接的な関係がない、案件の詳細情報が入手しにくい、価格交渉力が弱い、技術的な裁量権が限定的といった点が挙げられます。
なぜ多重下請け構造が問題なのか
経済産業省の「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査」でも、多重下請け構造がIT人材の待遇改善を妨げる要因として指摘されています。
出典:経済産業省「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査」
例えば、エンドユーザーがエンジニア1人に月100万円を支払っていても、3次請けのエンジニアが受け取る給与は月25〜35万円程度になることも珍しくありません。差額の65〜75万円は、各階層の企業にマージンとして吸収されているのです。
3次請けSES企業を見分ける10個のサイン【チェックリスト付き】
自分の会社が3次請け以下かどうかを見分けるには、以下の10個のサインをチェックしてください。
サイン1:客先の客先に常駐している
最も分かりやすいサインです。あなたが常駐している企業(A社)の社員が、さらに別の企業(B社)に常駐している場合、あなたの会社は少なくとも3次請け以下です。
サイン2:エンドユーザーが誰か知らない
自分が携わっているプロジェクトの最終的な発注元(エンドユーザー)が誰なのか分からない、または教えてもらえない場合は、下層の可能性が高いです。
元請けや2次請けの企業であれば、エンドユーザーとの関係性があるため、プロジェクトの背景や目的を明確に把握しています。
サイン3:単価が極端に安い
一般的な目安として、経験3年程度のエンジニアの場合:
- 元請け:月単価70〜100万円
- 2次請け:月単価50〜70万円
- 3次請け:月単価35〜50万円
- 4次請け以下:月単価30〜40万円
これらはあくまで目安ですが、自分の単価が市場相場より明らかに低い場合は、下層にいる可能性があります。
サイン4:会社の規模が小さい(社員数50名以下)
すべての小規模企業が3次請けというわけではありませんが、社員数が50名以下のSES企業は、営業力や交渉力の面で不利になりやすく、結果的に下層の案件を受けざるを得ないケースが多いです。
サイン5:案件の詳細が事前に分からない
案件に参画する前に、業務内容や使用技術、チーム構成などの詳細情報が提供されない場合は、下層の可能性があります。
上流の企業ほど、案件の全体像を把握しているため、エンジニアに対して詳細な情報を提供できます。
サイン6:契約書の開示を拒否される
自分の労働に関する契約書(請負契約書や準委任契約書)の開示を求めても、「機密情報だから」という理由で拒否される場合は要注意です。
厚生労働省のガイドラインでも、労働者には自身の労働条件を知る権利があるとされています。
サイン7:上流工程に関わることができない
要件定義や基本設計といった上流工程に一切関われず、詳細設計以降やテスト・保守のみを担当している場合は、3次請け以下の可能性が高いです。
サイン8:客先での発言権がない
会議で意見を求められない、提案をしても聞き入れられない、重要な意思決定から除外されるといった状況は、下層企業の典型的な特徴です。
サイン9:教育投資がほとんどない
研修や資格取得支援がない、または形だけの研修しかない場合は、企業に余裕がない証拠です。3次請け以下の企業は利益率が低いため、教育投資に回す資金がありません。
サイン10:離職率が高い(年間20%以上)
3次請け以下の企業は、待遇や労働環境の問題から離職率が高い傾向にあります。同僚が頻繁に辞めていく環境は、構造的な問題を抱えている可能性があります。
以下の項目に5つ以上当てはまる場合、3次請け以下の可能性が高いです。
- 客先の客先に常駐している
- エンドユーザーが誰か知らない
- 月単価が50万円以下(経験3年の場合)
- 会社の社員数が50名以下
- 案件の詳細が事前に分からない
- 契約書を見せてもらえない
- 上流工程に関われない
- 客先で意見を言えない
- 研修・教育がほとんどない
- 同僚がどんどん辞めていく
入社前に3次請けを見抜く5つの方法
転職活動中の方や、これからSES企業への入社を検討している方のために、入社前に3次請けを見抜く方法を解説します。
方法1:取引先情報をチェックする
企業のホームページや求人票に記載されている「主要取引先」を確認しましょう。
- 大手企業(NTTデータ、富士通、NEC等)が直接取引先 → 元請けまたは2次請けの可能性
- 中堅SIerばかりが取引先 → 2次請けまたは3次請けの可能性
- SES企業ばかりが取引先 → 3次請け以下の可能性大
- 取引先を公開していない → 下層の可能性(または機密保持の観点)
ただし、取引先として大手企業の名前があっても、直接取引とは限りません。「エンドユーザー実績」と「取引先」を混同して記載している企業もあるため、面接で詳しく確認する必要があります。
方法2:面接で商流について質問する
面接は、企業の実態を知る絶好の機会です。以下の質問をしてみましょう。
「御社の案件は、エンドユーザーから何次請けが多いですか?」 「元請け案件の割合はどれくらいですか?」 「商流が深い案件の場合、どのような対応をされていますか?」
これらの質問に対して、曖昧な回答や回避的な態度を取る企業は要注意です。優良企業であれば、商流について透明性を持って説明してくれます。
方法3:エンジニアの平均年収を確認する
求人票や面接で、エンジニアの平均年収や年収レンジを確認しましょう。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の調査によると、IT技術者の平均年収は約600万円です。これを大きく下回る場合は、下層企業の可能性があります。
特に、経験5年以上でも年収400万円台という場合は、構造的に利益率が低い3次請け以下の可能性が高いです。
方法4:口コミサイトを活用する
OpenWork、転職会議、Lighthouseなどの口コミサイトで、実際に働いていた人の声を確認しましょう。
特に注目すべきは「案件の質」「客先での立場」「給与の満足度」に関するコメントです。「下請けの下請けで辛い」「エンドユーザーが見えない」といったコメントがあれば、3次請け以下の可能性が高いです。
方法5:企業の設立年と資本金を確認する
設立から5年未満で資本金1000万円程度のSES企業は、営業基盤が弱く、3次請け以下の案件を受けざるを得ないケースが多いです。
もちろん、新しい企業でも優良な会社はありますが、リスクを避けたい場合は、設立10年以上、資本金5000万円以上の企業を選ぶことをおすすめします。
在籍中に3次請けかを確認する具体的手段
すでにSES企業で働いている方が、自社の商流での位置を確認する方法を解説します。
手段1:営業担当に直接聞く
最も確実な方法は、自社の営業担当や上司に直接聞くことです。
「今の案件は何次請けですか?」「エンドユーザーはどちらの企業ですか?」といった質問をしてみましょう。
透明性のある企業であれば、きちんと答えてくれます。逆に、はぐらかされたり、「そんなこと気にする必要はない」と言われたりする場合は、問題がある可能性があります。
手段2:契約書の確認を要求する
労働者には、自身の労働条件を知る権利があります。自分が関わっている案件の契約書(の必要部分)を見せてもらうよう要求しましょう。
契約書には、発注元企業の名前や契約金額(単価)が記載されています。これを見れば、商流での位置がある程度推測できます。
手段3:客先の体制図から推測する
プロジェクトの体制図やメンバーリストから、商流を推測することができます。
自分より上位の指示系統に何社の企業が存在するかを数えれば、おおよその商流が分かります。例えば、自分の上に3社の企業がある場合、自社は4次請けの可能性があります。
手段4:給与明細と請求単価を比較する
自分の給与と、会社があなたに対して設定している請求単価を比較しましょう。
一般的に、エンジニアの給与は請求単価の50〜60%程度が適正とされています。もし給与が請求単価の40%以下の場合、会社の取り分が多すぎるか、そもそも請求単価が低い(下層にいる)可能性があります。
手段5:同業他社の情報と比較する
同じ現場で働いている他社のエンジニアと情報交換することで、商流での位置関係が分かることがあります。
ただし、機密情報に触れない範囲で、慎重に情報収集する必要があります。
3次請けで働くことの5つのデメリット
3次請け以下のSES企業で働くことには、以下のような明確なデメリットがあります。
デメリット1:給与が構造的に低い
多重下請け構造では、各階層でマージンが抜かれるため、3次請けのエンジニアが受け取る給与は必然的に低くなります。
例えば、エンドユーザーが月100万円で発注した案件でも:
- 元請けが20%のマージン(80万円で2次請けへ)
- 2次請けが25%のマージン(60万円で3次請けへ)
- 3次請けが40%のマージン(エンジニアの給与は36万円)
このような構造では、どれだけスキルアップしても、給与の大幅な上昇は期待できません。
デメリット2:スキルアップの機会が限定的
3次請け以下の企業は、上流工程や重要な開発タスクを任されることが少なく、テストや保守、ドキュメント作成といった下流工程の業務が中心になります。
これでは、市場価値の高いスキルが身につきにくく、キャリアアップの道が狭まってしまいます。
デメリット3:客先での立場が弱い
3次請けのエンジニアは、客先では「外注の外注」という立場になります。
会議での発言権がない、重要な情報が共有されない、意思決定から除外されるといった扱いを受けることが多く、モチベーションの低下につながります。
デメリット4:雇用が不安定
景気が悪化したり、プロジェクトが縮小したりする際、真っ先に契約を切られるのは下層の企業です。
3次請け以下の企業は、案件の安定性が低く、急な契約終了や待機期間の発生リスクが高くなります。
デメリット5:キャリアの選択肢が狭まる
3次請けでの経験は、転職市場で評価されにくい傾向があります。
「下請けの仕事しかできない人」というレッテルを貼られることもあり、元請けや自社開発企業への転職が困難になる可能性があります。
すべての3次請け企業が劣悪というわけではありません。技術力が高く、特定分野に特化している企業や、エンジニアを大切にする企業も存在します。重要なのは、自分のキャリアゴールと現在の環境が合致しているかを見極めることです。
3次請けから脱却する3つのキャリア戦略
3次請け以下の企業から脱却し、より良いキャリアを築くための戦略を解説します。
戦略1:技術力を磨いて上流企業へ転職
最も王道の戦略は、技術力を高めて、元請けや2次請けの企業へ転職することです。
- 市場価値の高い技術を習得(クラウド、AI/ML、セキュリティなど)
- 資格取得で実力を証明(AWS認定、情報処理技術者試験など)
- 個人開発でポートフォリオを作成
- 技術ブログやQiitaで情報発信
- 勉強会やカンファレンスに参加してネットワーキング
これらの活動を1〜2年継続すれば、上流企業への転職可能性が大きく高まります。
戦略2:SESから完全に脱却する
多重下請け構造から完全に抜け出すには、SES以外の働き方を選ぶことが有効です。
選択肢としては、自社開発企業への転職、社内SEへの転職、フリーランスエンジニアになる、スタートアップに参加するといった道があります。
特に自社開発企業や社内SEは、商流という概念自体がないため、構造的な問題から解放されます。
戦略3:優良SES企業への転職
すぐにSESから脱却することが難しい場合は、まず元請けや2次請けの優良SES企業への転職を目指しましょう。
- エンドユーザーとの直接取引がある
- 平均年収が業界水準以上(500万円以上)
- 上流工程の案件が豊富
- 教育・研修制度が充実
- エンジニアファーストの文化
- 単価や商流を透明化している
優良SES企業であれば、3次請け以下の案件は受けない方針を持っていることが多く、エンジニアの成長とキャリアアップを支援してくれます。
多重下請けから脱却できる転職サービス
3次請けから脱却し、より上流の企業や自社開発企業への転職を目指す方には、IT業界に特化した転職エージェントの活用がおすすめです。
\ 多重下請けから脱却したい方へ /
クラウドリンク
クラウドリンクは、多重下請け構造から脱却したいエンジニアに最適な転職エージェントです。
紹介する企業は、元請けや2次請けの優良SIer、自社開発企業が中心。3次請け以下の案件は扱わない方針を明確にしています。
年収アップ率も高く、3次請けから転職した方の多くが、年収100万円以上のアップを実現しています。商流や単価についても透明性を持って説明してくれるため、安心して転職活動を進められます。
\ 下請け構造から完全に離れたい方へ /
社内SE転職ナビ
社内SE転職ナビは、社内SE・情報システム部門の求人に特化した転職エージェントです。
社内SEは企業の直接雇用のため、多重下請け構造とは完全に無縁です。一つの会社に腰を据えて、安定した環境で働くことができます。
3次請けでの経験も、ベンダーコントロールやシステム導入プロジェクトで活かすことができ、キャリアチェンジの成功事例が多数あります。
\ 上流工程にキャリアアップしたい方へ /
キッカケエージェント
キッカケエージェントは、ITエンジニアのキャリアアップに特化した転職エージェントです。
3次請けから2次請け、元請けへのステップアップを目指す方に最適。エンジニア経験のあるアドバイザーが、技術力を正しく評価し、商流での位置を改善できる求人を提案してくれます。
面接対策では、下請けでの経験をどうアピールするかなど、実践的なアドバイスも受けられます。
転職エージェントによって保有している求人や得意分野が異なります。2〜3社に登録して比較検討することで、より多くの選択肢から自分に合った求人を見つけることができます。すべて無料で利用できるので、まずは気軽に相談してみましょう。
よくある質問
まとめ:3次請けを見分けて、より良いキャリアを築こう
この記事では、SESの3次請け企業を見分ける方法から、多重下請け構造から脱却するキャリア戦略まで解説しました。
- 3次請けは、エンドユーザーから3番目の階層にある企業
- 10個のサインで3次請けかどうかを見分けることができる
- 入社前なら、取引先情報や面接での質問で見抜ける
- 3次請けには、給与・スキルアップ・雇用安定性の面でデメリットがある
- 技術力向上、SESからの脱却、優良企業への転職が脱却の鍵
多重下請け構造は、IT業界の構造的な問題です。しかし、この構造を理解し、自分の立ち位置を把握することで、適切なキャリア戦略を立てることができます。
もしあなたが3次請け以下の企業で働いていて、現状に不満があるなら、まずは行動を起こしましょう。技術力を磨く、転職エージェントに相談する、上流企業の情報を収集する。小さな一歩が、大きな変化につながります。
あなたのキャリアは、あなた自身が選択するものです。この記事が、より良いキャリアを築くきっかけになれば幸いです。
\ 多重下請けから脱却したい方へ /




