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SES1年目で「辞めたい」と感じているあなたへ
「入社してまだ1年も経っていないのに、もう辞めたい」
毎朝、客先に向かう電車の中で憂鬱な気持ちになる。配属された現場では雑用ばかりで、エンジニアとしてのスキルが身についている実感がない。相談できる先輩もおらず、孤独を感じている。
もしあなたがこのような状況にいるなら、この記事はまさにあなたのために書きました。
結論からお伝えすると、SES1年目で辞めたいと感じることは決して「甘え」ではありません。むしろ、自分のキャリアを真剣に考えているからこそ生まれる健全な感情です。
この記事では、SES1年目で辞めたくなる本当の理由から、辞めるべきかの判断基準、そして転職を成功させる具体的な方法まで、あなたが次の一歩を踏み出すために必要な情報をすべてお伝えします。
SES1年目で「辞めたい」と感じるのは甘えではない
まず最初にお伝えしたいのは、SES1年目で辞めたいと感じることは珍しいことではないということです。
厚生労働省が発表している「新規学卒就職者の離職状況」によると、情報通信業(IT業界)における新卒3年以内の離職率は約25〜30%で推移しています。つまり、4人に1人以上が3年以内に最初の会社を辞めているのです。
特にSES業界は、IT業界の中でも離職率が高い傾向にあります。その背景には、SES特有のビジネスモデルと労働環境が関係しています。
SES(システムエンジニアリングサービス)は、エンジニアを客先に常駐させることで収益を得るビジネスモデルです。このモデルでは、エンジニアの「稼働率」が重視されるため、スキルアップよりも「とにかく現場に出す」ことが優先されがちです。
その結果、未経験者や経験の浅いエンジニアが、十分な教育を受けないまま現場に送り込まれ、孤立感やスキル不足に悩むケースが多発しています。
あなたが「辞めたい」と感じているのは、あなた自身の問題ではなく、SES業界の構造的な問題に起因している可能性が高いのです。
SES1年目が辞めたくなる7つの理由
SES1年目のエンジニアが辞めたいと感じる理由は、大きく7つに分類できます。あなたがどの理由に当てはまるかを確認してみてください。
理由1:スキルが身につかない現場に配属された
SES1年目で最も多い悩みが「スキルが身につかない」というものです。
具体的には、テスト業務やドキュメント作成、データ入力といった単純作業ばかりを任され、プログラミングやシステム設計といったエンジニアとしてのコアスキルを習得する機会がないというケースです。
SES企業の中には、「まずは現場経験を積むことが大切」という名目で、実際にはスキルアップにつながらない案件にエンジニアを配属することがあります。これは、単価の低い案件でも稼働率を維持したいという企業側の都合によるものです。
理由2:客先で孤立している
SESの特性上、自社の同僚ではなく、客先の社員と一緒に働くことになります。しかし、客先にとってSESエンジニアは「外部の人間」であり、情報共有やコミュニケーションから除外されることも珍しくありません。
ランチに誘われない、重要な会議に参加できない、雑談の輪に入れないといった小さな疎外感が積み重なり、精神的な負担になっていきます。
理由3:自社との関係が希薄
客先常駐が基本のSESでは、自社のオフィスに出社する機会がほとんどありません。その結果、自社の上司や同僚との関係が築けず、帰属意識が薄れていきます。
困ったときに相談できる相手がいない、自分のキャリアについて話し合える人がいないという状況は、特に1年目のエンジニアにとって大きなストレス要因となります。
理由4:給与が低い・上がる見込みがない
SES業界は多重下請け構造になっていることが多く、エンジニアに支払われる給与は、クライアントが支払う金額の一部に過ぎません。
一般的に、SESエンジニアの給与は客先に請求する単価の50〜60%程度とされています。残りは中間マージンとして、元請け企業やSES企業の利益になります。この構造では、どれだけスキルアップしても給与が大幅に上がることは期待しにくいのが現実です。
理由5:案件ガチャで外れを引いた
SESでは、どの現場に配属されるかは運の要素が大きく、いわゆる「案件ガチャ」と呼ばれています。
希望とは異なる技術領域の案件、通勤に2時間かかる現場、パワハラ気質の客先担当者など、自分ではコントロールできない要因によって、働く環境が大きく左右されます。
理由6:将来のキャリアが見えない
「このままSESを続けていて、5年後、10年後にどうなっているのだろう」という不安は、多くのSESエンジニアが抱えています。
SESでは、特定の技術を深く習得するよりも、様々な現場を転々とすることが多いため、専門性が身につきにくいという問題があります。また、マネジメント経験を積む機会も限られるため、キャリアアップの道筋が見えにくいのです。
理由7:研修・教育体制が不十分
SES企業の中には、入社後の研修がほとんどなく、いきなり現場に配属されるケースがあります。
経済産業省の「IT人材需給に関する調査」によると、IT人材の育成・教育は業界全体の課題として認識されています。特にSES企業では、教育にコストをかけるよりも、早く現場に出して稼働させることを優先する傾向があります。
今すぐ辞めるべき危険なSES企業の特徴
「辞めたい」という気持ちがあっても、「本当に辞めていいのか」と迷うのは当然のことです。ここでは、すぐに転職を検討すべき危険なSES企業の特徴を解説します。
以下の特徴に複数当てはまる場合は、早めに転職活動を始めることをおすすめします。
特徴1:違法な労働環境
- 残業代が支払われない(サービス残業の強要)
- 36協定を超える長時間労働が常態化している
- 有給休暇を取得させてもらえない
- 社会保険に加入させてもらえない
これらは労働基準法違反であり、我慢して働き続ける必要はありません。労働基準監督署への相談も視野に入れつつ、速やかに転職活動を進めましょう。
特徴2:偽装請負・二重派遣の疑い
SES契約は「準委任契約」であり、客先からの直接的な指揮命令は本来受けないはずです。しかし、実態として客先の社員から直接指示を受けている場合、偽装請負に該当する可能性があります。
また、SES企業から別のSES企業を経由して現場に配属されている場合は、二重派遣の疑いがあります。これらは違法行為であり、あなた自身がリスクを負う必要はありません。
特徴3:ハラスメントが放置されている
客先でパワハラやセクハラを受けているにもかかわらず、自社に相談しても対応してもらえない場合は、その企業に留まる価値はありません。
SES企業には、エンジニアを守る義務があります。その義務を果たさない企業は、あなたのキャリアを預けるに値しません。
特徴4:待機期間中の扱いが不当
案件と案件の間の待機期間中に、給与を減額される、自己都合退職を迫られるといったケースも問題です。
待機期間中であっても、雇用契約が続いている限り、給与は支払われるべきです。これを理由に不当な扱いを受けている場合は、転職を検討しましょう。
不眠、食欲不振、慢性的な疲労感、出社前の吐き気など、心身に明らかな不調が出ている場合は、キャリアよりも健康を最優先してください。必要に応じて、心療内科やメンタルクリニックの受診も検討しましょう。
もう少し続けた方がいいケースの判断基準
一方で、すべてのケースで「今すぐ辞めるべき」とは限りません。もう少し続けることで状況が改善する可能性があるケースもあります。
ケース1:現場が変われば解決する問題
辞めたい理由が「今の現場」に起因している場合、現場異動で解決する可能性があります。
まずは自社の営業担当や上司に相談し、現場の変更を依頼してみましょう。SES企業によっては、エンジニアの希望を聞いて現場を調整してくれるところもあります。
ケース2:入社から半年未満の場合
入社から半年未満で転職すると、次の転職活動で「すぐに辞める人」という印象を持たれるリスクがあります。
もちろん、前述の「今すぐ辞めるべきケース」に該当する場合は別ですが、そうでなければ、最低でも半年〜1年は続けることで、転職活動がスムーズになる可能性があります。
ケース3:明確な転職先のビジョンがない場合
「とにかく今の会社を辞めたい」という気持ちだけで転職すると、次の会社でも同じ問題に直面する可能性があります。
辞めたい理由を明確にし、次にどのような環境で働きたいかを具体的にイメージしてから転職活動を始めることで、ミスマッチを防げます。
- 現場異動で解決する可能性があるか?
- 自社に相談できる人はいるか?
- 心身の健康は保たれているか?
- 次にやりたいことが明確か?
- 最低限のスキル(1年程度の実務経験)は身についているか?
上記のうち3つ以上「いいえ」の場合は、転職を本格的に検討することをおすすめします。
SES1年目で辞める場合のキャリアへの影響
「1年目で辞めたら、今後のキャリアに傷がつくのでは」という不安は、多くの方が抱えています。ここでは、1年目で辞めることのリアルな影響について、本音でお伝えします。
正直なデメリット
1年目での転職には、以下のようなデメリットがあることは事実です。
まず、転職活動において「なぜ1年で辞めたのか」は必ず聞かれます。この質問に対して、前職の悪口を言ったり、曖昧な回答をしたりすると、マイナス評価につながります。
また、実務経験が1年未満の場合、応募できる求人が限られることもあります。特に、即戦力を求める企業では、経験年数がネックになることがあります。
意外と大丈夫な理由
一方で、IT業界は慢性的な人手不足であり、1年目の転職が致命的なハンデになることは少ないです。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「IT人材白書」によると、IT人材の不足は年々深刻化しており、企業は若手エンジニアの採用に積極的です。
特に以下の条件を満たしていれば、1年目でも転職は十分に可能です。
- 基本的なプログラミングスキルがある(独学でもOK)
- 転職理由を前向きに説明できる
- 次のキャリアビジョンが明確
- IT業界で働き続ける意欲がある
転職理由の伝え方
1年目での転職を成功させるカギは、転職理由の伝え方にあります。
NG例:「客先常駐が嫌だった」「スキルが身につかなかった」「上司と合わなかった」
OK例:「より専門性を高められる環境で、腰を据えて技術を磨きたいと考えました」「チーム開発の経験を積み、将来的にはリードエンジニアを目指したいと思っています」「自社サービスの開発に携わることで、ユーザーに価値を届ける実感を得たいです」
ポイントは、前職の批判ではなく、次のキャリアへの前向きな意欲を伝えることです。
SES1年目からの転職先5つの選択肢
SES1年目から転職する場合、どのような選択肢があるのでしょうか。ここでは、現実的な5つの転職先を紹介します。
選択肢1:自社開発企業
自社でWebサービスやアプリを開発・運営している企業です。
メリットとしては、一つのプロダクトに長期的に関わることで専門性が身につくこと、ユーザーからのフィードバックを直接受けられること、チーム開発の経験が積めることが挙げられます。
一方で、未経験や経験1年未満での転職はハードルが高い傾向にあります。ポートフォリオの作成や、技術力をアピールできる準備が必要です。
選択肢2:受託開発企業(優良SIer)
クライアントから開発案件を受注し、自社内で開発を行う企業です。
SESとの違いは、自社内で開発を行うため、チームとしての一体感があること、一つのプロジェクトに深く関われることです。
大手SIerや優良な中堅SIerであれば、教育体制も整っており、SES1年目からのステップアップ先として現実的な選択肢です。
選択肢3:社内SE
一般企業の情報システム部門で、社内のITインフラやシステムを管理・運用する職種です。
開発よりも運用・保守がメインになることが多いですが、ワークライフバランスが取りやすく、一つの会社に腰を据えて働けるというメリットがあります。
SESで培った現場経験は、社内SEとしてベンダーコントロールを行う際に活かせます。
選択肢4:別のSES企業(優良SES)
すべてのSES企業が悪いわけではありません。エンジニアのキャリアを重視し、希望に沿った案件を紹介してくれる優良なSES企業も存在します。
優良SESの見分け方としては、エンジニアの希望を聞いて案件を選定してくれること、教育・研修制度が充実していること、待機期間中も給与が満額支給されること、単価や案件情報を開示していることなどが挙げられます。
選択肢5:フリーランスエンジニア
1年目でフリーランスになることは一般的にはおすすめしませんが、選択肢として知っておくことは大切です。
フリーランスになるためには、最低でも2〜3年の実務経験と、自分で案件を獲得できるスキル・人脈が必要です。将来的な選択肢として視野に入れつつ、まずは正社員として経験を積むことをおすすめします。
SES1年目で転職を成功させる具体的な手順
ここからは、SES1年目から転職を成功させるための具体的な手順を解説します。
ステップ1:転職理由と希望条件を整理する
まずは、なぜ転職したいのか、次の会社に何を求めるのかを明確にしましょう。
- 今の会社を辞めたい理由(複数ある場合は優先順位をつける)
- 次の会社に求める条件(技術領域、働き方、年収、勤務地など)
- 3年後、5年後にどうなっていたいか(キャリアビジョン)
- 譲れない条件と妥協できる条件
ステップ2:スキルの棚卸しをする
1年目でも、何かしらのスキルや経験は身についているはずです。それを言語化しましょう。
使用した言語・フレームワーク・ツール、担当した業務内容、チームでの役割、工夫したこと・成果を出したことなどを具体的に書き出します。
たとえテスト業務がメインだったとしても、「テスト設計の経験」「バグ報告の経験」「品質管理の視点」など、アピールできるポイントはあります。
ステップ3:ポートフォリオを作成する
自社開発企業を目指す場合は、ポートフォリオ(自主制作物)があると有利です。
業務で触れた技術を使って、簡単なWebアプリやツールを作成してみましょう。完璧なものでなくても、「自分で学び、手を動かす姿勢」をアピールできます。
GitHubにコードを公開し、READMEで概要や技術スタックを説明できるようにしておくと良いでしょう。
ステップ4:転職エージェントに登録する
1年目での転職は、一人で進めるよりも、転職エージェントのサポートを受けることをおすすめします。
IT業界に特化した転職エージェントであれば、SES経験者の転職事情に詳しく、適切な求人を紹介してもらえます。また、職務経歴書の添削や面接対策など、転職活動全般のサポートを受けられます。
ステップ5:面接対策を行う
1年目での転職では、「なぜ1年で辞めるのか」「次は長く働けるのか」という点を必ず確認されます。
これらの質問に対して、前向きかつ具体的に回答できるよう準備しておきましょう。転職エージェントとの模擬面接も効果的です。
SES経験を活かせる転職エージェント
SES1年目からの転職を成功させるためには、IT業界に特化した転職エージェントの活用が効果的です。ここでは、SES経験者におすすめのエージェントを紹介します。
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よくある質問
まとめ:SES1年目で辞めたいなら、まず行動を起こそう
この記事では、SES1年目で辞めたいと感じている方に向けて、辞めたくなる理由、辞めるべきかの判断基準、そして転職を成功させる具体的な方法を解説しました。
- SES1年目で辞めたいと感じるのは甘えではなく、業界構造に起因する問題であることが多い
- 違法な労働環境やハラスメントがある場合は、すぐに転職を検討すべき
- 1年目での転職は不利になることもあるが、IT業界の人手不足もあり、致命的ではない
- 転職を成功させるためには、転職理由の整理、スキルの棚卸し、IT特化の転職エージェントの活用が重要
大切なのは、「辞めたい」という気持ちを無視せず、自分のキャリアと向き合うことです。
今の環境に不満があるなら、まずは転職エージェントに相談してみることをおすすめします。相談したからといって、すぐに転職しなければならないわけではありません。自分の市場価値を知り、どのような選択肢があるのかを把握するだけでも、気持ちが楽になることがあります。
あなたのキャリアは、あなた自身が選ぶものです。この記事が、その一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。
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