深夜にスマホのアラート音で叩き起こされる。休日でもポケットの端末が気になって落ち着かない。「オンコールがつらい」「夜間対応をもう辞めたい」と検索したあなたは、たぶん我慢の限界が近いところまで来ています。
この記事は、インフラエンジニア・SRE・運用監視・社内SEなど、オンコールや障害対応で疲弊している人に向けて書いています。「辞めるべきか」「そもそも自分が甘いだけなのか」を、感情ではなく判断材料で整理できるようにするのが目的です。
結論として、オンコールがつらくて辞めたいと感じるのは甘えではありません。ただし「今すぐ辞める」か「準備してから動く」かは、心身の状態とオンコール体制の健全さで判断が分かれます。まずは危険サインを確認し、辞める・辞めないに関わらず、退職前に有給残日数・就業規則・引き継ぎ資料を整理しておくことが、どの道を選んでも損をしないための第一歩です。
オンコールが限界なら「甘え」ではない理由
まず前提を共有します。オンコール対応は、業務時間外に心身を拘束される特殊な働き方です。実際に呼び出されなくても、「いつ鳴るかわからない」という待機状態そのものが、睡眠の質や休息の深さを削っていきます。これは気合いや慣れで解決する問題ではありません。
特にエンジニアの場合、つらさが「甘え」に見えやすい構造があります。障害はいつ起きるか読めず、深夜対応の負荷はログやチケットに残りにくい。「対応時間」は記録されても、「待機による消耗」は評価に反映されないことがほとんどです。だからこそ、周囲に理解されず、自分でも「自分が弱いだけかも」と思い込みやすいのです。
オンコールがつらいと感じる要因は、実は「対応そのもの」だけではありません。手順書が整備されていない、担当が自分に集中している、人員が足りない、といった体制側の問題であるケースが少なくありません。あなたのスキルや根性の問題と切り分けて考えることが大切です。
「つらい理由」を分解すると次の一手が見える
「オンコールがつらい」を一括りにせず、要因を分解してみてください。要因ごとに、取るべき対応が変わります。
- 頻度の問題:呼び出しが多すぎる。人員不足やアラート設計の甘さが原因のことが多い。
- 体制の問題:ローテーションがなく、実質いつも自分。属人化している。
- 報酬の問題:待機手当・深夜手当が支払われていない、または見合っていない。
- 心身の問題:眠れない、休日も気が休まらない、動悸や食欲不振がある。
- 設計の問題:手順書がなく、毎回ゼロから調査。障害が起きる前提の構成になっていない。
このうち「頻度」「体制」「設計」は、社内の改善提案で解決できる余地があります。一方で「心身」に症状が出ている場合は、改善を待つ前に距離を取る判断が必要になることもあります。
今すぐ動くべき危険サイン
「準備してから転職しよう」は基本的に正しい選択です。ただし、次のような状態にある場合は、準備よりも先に、まず休むこと・距離を取ることを優先してください。
以下に当てはまる場合は、キャリアの最適化より心身の回復が先です。眠れない日が続く、休日もアラートが鳴る夢を見る、動悸や強い不安がある、朝どうしても体が動かない、といった状態は、体からの明確なサインです。無理を続ける前に、心療内科や産業医への相談を検討してください。診断や休職は、退職や転職の判断を落ち着いて行うための時間を確保する手段にもなります。
逆に、つらいけれど睡眠や食事はまだ保てている、休日は多少切り替えられる、という段階であれば、慌てて辞めずに情報収集と準備を並行するのが現実的です。同じ「辞めたい」でも、置かれた状態によって最適解は違います。
退職前に確認しておくべきこと
辞めると決めていなくても、選択肢を確保するために先に整理しておくと動きやすくなります。ここは「キャリアのデバッグ」でいえば、現状のログを吐き出して状態を把握する工程です。
- 有給残日数(退職日から逆算し、消化できるか確認しておく)
- 就業規則(退職の申し出時期、オンコール手当の規定、引き継ぎのルール)
- 貸与物(社用PC、スマホ、入館証、VPNトークン、セキュリティキーなど)
- 引き継ぎ資料(手順書、監視設定、アラート閾値、エスカレーション先の情報)
特にインフラ・運用職は、自分の頭の中にしか情報がない属人化状態になりがちです。引き継ぎ資料を作る作業は、退職準備であると同時に、あなた自身の実績の棚卸しにもなります。「どんな障害を、どう設計・対応してきたか」を言語化しておくと、後の職務経歴書づくりでそのまま使えます。
退職前に「出来事ログ」を残しておくのもおすすめです。呼び出された日時、対応内容、残業・待機時間、評価面談での発言などをメモしておくと、後で未払い手当の相談や、転職時の実績説明で役立ちます。感情ではなく事実の記録が、あなたを守る材料になります。
オンコール中でも退職はできるのか
「担当を外れられない」「引き継ぎ相手がいない」という理由で、辞めたくても言い出せない人は多いです。しかし、退職は労働者の権利であり、オンコール担当だからといって辞められないわけではありません。
一般的に、期間の定めのない雇用契約では、退職の申し出から一定期間の経過で退職が可能とされています。ただし、就業規則で申し出時期が定められていることも多いため、まずは自社の規定を確認してください。個別の契約内容や事情によって扱いが変わるため、判断に迷う場合は、労働基準監督署や専門家への相談も選択肢になります。
「後任が決まるまで辞めさせない」「引き継ぎが終わるまで退職は認めない」といった引き止めは、法的な根拠があるとは限りません。ただし、円満に進めたい場合は、引き継ぎ資料をあらかじめ整えておくことで、余計な摩擦を減らせます。感情的な対立を避けたい人ほど、準備が効きます。
上司に言い出せないときの選択肢
退職の意思はあるのに、上司に伝えるのがどうしてもつらい、というケースがあります。パワハラ的な言動があったり、強い引き止めが予想されたり、そもそも心身が限界で会話する気力がない場合です。
まず検討したいのは、直属の上司以外の相談ルートです。人事、社内の相談窓口、信頼できる先輩など、間に入ってくれる存在がいれば負担は下がります。それでも直接のやり取り自体が難しい場合に、退職代行という手段が選択肢に入ってきます。
退職代行は「最初に使うもの」ではなく、自分で伝えるのがどうしても難しい状況で検討する手段です。万能な解決策ではありませんし、使う前に就業規則や社内相談窓口を確認しておくことをおすすめします。そのうえで、会社と直接やり取りしたくない、引き止めが強い、心身が限界、といった条件が重なるなら、有効な選択肢になり得ます。
状況別・退職代行の選び方
退職代行にはいくつかのタイプがあり、抱えている問題によって向き不向きが分かれます。自分の状況に近いものを目安にしてください。
| タイプ | 特徴 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 労働組合型+弁護士監修(辞スル) | 会社との連絡代行に加え、退職日や有給消化などの交渉に対応できる場合がある。LINE相談に向いた導線。 | 会社と直接やり取りしたくない/引き止めがつらい/退職を認めてもらえない人 | 交渉範囲や対応内容は事前に確認を。法的トラブルは弁護士型が適することもある。 |
| 労働組合型(即ヤメ) | 後払いに対応。すぐに相談したい人向けの導線。 | 手元のお金が不安/今すぐ会社に行きたくない/費用面が心配な人 | 後払いの条件やサービス範囲は申込前に確認しておく。 |
| 弁護士型(弁護士法人ガイア) | 未払い賃金、損害賠償、パワハラなど法的トラブルに対応できる。 | 未払いの深夜・待機手当がある/損害賠償を示唆された/会社と揉めている人 | 法的対応が必要ない場合は、他タイプの方が費用を抑えられることもある。 |
上司に退職を伝えるのが怖い、引き止めがつらいなら
どうしても自分で伝えるのが難しい場合の選択肢として、退職日や有給消化の交渉に対応できるケースもあります。まずは無料相談で、自分の状況を整理してみるところから始められます。
辞スルの無料相談を見てみる
※退職代行は最初に使うものではなく、状況に応じて検討する手段です。まずは就業規則や社内相談窓口も確認しましょう。
なお、手元のお金が不安で一歩を踏み出せない場合は、後払いに対応したサービスも選択肢になります。費用面がネックで動けない、という人はこちらも確認してみてください。
お金の不安で退職に踏み切れないなら、後払いという選択肢も
「今すぐ会社に行きたくないけれど、費用が心配」という場合、後払い対応のサービスなら相談のハードルを下げられます。未払いの手当やパワハラなど法的トラブルがある場合は、弁護士型を検討するのも一つの方法です。
即ヤメ(後払い対応)を見てみる
※未払い賃金や損害賠償など法的な問題がある場合は、弁護士型(弁護士法人ガイア)も選択肢になります。
オンコールから抜け出すために次に狙うべき職場
ここが最も重要です。オンコール自体が悪いのではなく、「体制が整っていないオンコール」が消耗の原因です。転職を考えるなら、夜間対応の負荷が構造的に低い、または適切に設計された職場を選ぶことが鍵になります。
候補1:社内SE
事業会社の情報システム部門は、24時間365日のサービス監視を外部に委託しているケースも多く、緊急のオンコール頻度が下がる可能性があります。運用の経験は社内SEでも強い武器になります。ただし、会社によっては情シスが何でも屋になり、別種の負荷がかかることもあるため、求人の業務範囲は必ず確認してください。
候補2:クラウドエンジニア
マネージドサービスを前提としたクラウド構成では、障害対応の一部が自動化・冗長化されており、深夜の手動対応が減る設計が可能です。これまでのインフラ・運用経験は、クラウド移行や運用自動化の文脈で高く評価されやすい領域です。
候補3:フルリモートの運用改善系
監視やアラート設計そのものを改善する立場(運用改善、オブザーバビリティ領域など)に回れば、「呼ばれる側」から「呼ばれない仕組みを作る側」へシフトできます。今の苦労が、そのまま提案力として活きるポジションです。
候補4:オンコール体制が整ったSRE
SRE自体を辞める必要はないかもしれません。SREでも、複数人のローテーション、明確なエスカレーションポリシー、待機手当、SLOに基づくアラート設計などが整った組織なら、負荷は大きく変わります。「SREが嫌」ではなく「今の職場のSRE体制が未成熟」なだけの可能性を、一度切り分けてみてください。
転職先を探すときは、面接で「オンコールの頻度」「ローテーション人数」「待機手当の有無」「手順書の整備状況」「直近の障害対応の様子」を具体的に質問してください。これらに明確に答えられる会社は、運用を軽視していない可能性が高いです。逆に曖昧な返答なら、同じ消耗を繰り返すリスクがあります。
今のスキルがどう評価されるかを先に知っておく
「運用ばかりで市場価値が低いのでは」と不安に感じる人は多いですが、実際には障害対応・監視設計・トラブルシューティングの経験は、事業会社やクラウド領域で必要とされる実務スキルです。問題は、それを言語化できているかどうかです。
辞めるかどうかを決める前に、自分の経験が今の市場でどう見られるかを知っておくと、判断がぐっと楽になります。転職を確定させる必要はなく、情報収集として市場価値を確認するだけでも、「無理に今の会社にしがみつく必要はない」と分かるだけで気持ちが軽くなることがあります。
オンコールのない働き方が可能か、市場価値から確認してみる
転職するか迷っている段階でも、情報収集として相談できます。今の運用・インフラ経験で狙える求人や、社内SE・クラウド系のポジションを知るだけでも、判断材料が増えます。相談したからといって、必ず転職する必要はありません。
社内SE転職ナビで求人を見てみる
※まずは自分の市場価値を確認してみましょう。
キャリアの方向性そのものを相談したい場合は、エンジニアのキャリア支援に対応したエージェントに話を聞いてみるのも一つの方法です。
失敗しやすい判断パターン
最後に、オンコール疲れの状態で陥りやすい判断ミスを挙げておきます。同じ後悔を避けるための注意点です。
限界の状態で「とにかく今すぐ辞められればどこでもいい」と決めると、転職先で同じオンコール地獄を繰り返すことがあります。焦って決めた転職ほど、面接で運用体制を確認しきれず、ミスマッチが再発しがちです。心身が限界なら、まず休職や有給で距離を取ってから、落ち着いた状態で職場を選ぶ方が、結果的に良い選択につながりやすくなります。
よくある質問
オンコールがつらくて辞めたいのは、やっぱり甘えでしょうか?
甘えではありません。待機による拘束や睡眠の分断は、実際に呼び出されなくても心身を消耗させます。慣れや根性で解決する問題ではなく、体制や設計の問題であることも多いため、自分を責める必要はありません。
オンコール担当中でも退職できますか?
担当中であっても退職は可能です。ただし就業規則で申し出時期が定められていることが多いため、まず自社の規定を確認してください。個別の事情で扱いが変わるため、判断に迷う場合は労働基準監督署や専門家への相談も選択肢です。
深夜や待機の手当が払われていません。どうすればよいですか?
まずは就業規則の規定と、実際の対応・待機時間の記録を突き合わせて確認しましょう。未払いが疑われる場合は、対応日時や時間のログを残したうえで、労働基準監督署や、法的トラブルに対応できる弁護士型の退職代行・専門家への相談を検討してください。
運用・インフラ経験しかありませんが、オンコールのない職場に転職できますか?
転職を保証することはできませんが、障害対応や監視設計の経験は社内SE・クラウド・運用改善系で必要とされるスキルです。まずは市場価値を確認し、経験を職務経歴書で言語化することが、選択肢を広げる第一歩になります。
上司が怖くて退職を切り出せません。
まず人事や社内相談窓口など、直属の上司以外のルートを探してみてください。それでも直接のやり取りが難しい場合に、退職代行が選択肢に入ります。最初から使う手段ではありませんが、心身が限界なら距離を取るための手段として検討する価値があります。
まとめ:まず「危険サインの確認」と「ログの整理」から始めよう
オンコールや夜間対応がつらくて辞めたいと感じるのは、甘えではありません。大切なのは、感情で決めるのではなく、自分の状態を切り分けて判断することです。
今日からできることは、大きく2つです。ひとつは、眠れない・動悸がある・朝動けないといった危険サインが出ていないかを確認すること。出ているなら、キャリアの前にまず休むことを優先してください。もうひとつは、辞める・辞めないに関わらず、有給残日数・就業規則・貸与物・引き継ぎ資料と、これまでの対応ログを整理しておくことです。これは同時に、あなたの実績の棚卸しにもなります。
次の一手は状況で選べます。会社と直接やり取りするのがつらいなら退職代行という選択肢があり、オンコールのない働き方を探したいなら、まずは市場価値を確認して判断材料を増やすところから始められます。どちらも「必ず使うべきもの」ではなく、あなたが自分で選ぶための手段です。焦らず、まずは現状を整理することから始めてみてください。
※本記事は一般的な情報をまとめたものであり、退職日・有給・労働条件・手当などの扱いは個別の契約や就業規則によって変わります。心身の不調や法的トラブルがある場合は、医療機関や労働基準監督署、専門家への相談も検討してください。

